2021年3月号
特集
名作に心を洗う
我が心の名作①
  • キッコーマン名誉会長茂木友三郎

ピーター・ドラッカー
『現代の経営』

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ビジネススクール留学のきっかけを与えてくれた本

経営学の父、マネジメントの父と称されるピーター・ドラッカーの名著『現代の経営』と出逢ったのは、昭和31年春、慶應義塾大学3年次の時だった。野田一夫氏の監訳で自由国民社から「正篇事業と経営者」「続篇 組織と人間」の2冊が刊行され、当時学生の間で流行はやっていた。

私も新聞の広告か書評で取り上げられているのを見て買い求めた記憶がある。それまでも経営学の本は読んでいたが、様々な学説をあげつらっているだけで興味をかれなかった。ところが、『現代の経営』はそれらとは一線をかくしており、いたく感銘を受けた。

一読し、企業経営とはどういうものなのかが、大学生ながら何となく理解でき、自分も企業経営をやってみたい、もっと詳しく勉強してみたいという気持ちが沸々ふつふつと湧き起こってきたのである。企業経営に対する関心が一挙に高まると共に、アメリカのビジネススクールに留学したいと強く思うようになった。

新卒でキッコーマンに入社した後、実際に24歳の時からコロンビア大学経営大学院で2年間勉強することができた。後述するが、この留学経験は私の人生にとって非常に大きな転機となった。そういう意味で、「きっかけ」を与えてくれた本なのである。

キッコーマン名誉会長

茂木友三郎

もぎ・ゆうざぶろう

昭和10年千葉県生まれ。33年慶應義塾大学卒業。野田醤油(現・キッコーマン)入社。36年コロンビア大学経営大学院経営学修士(MBA)学位取得。54年取締役。常務、専務を経て、平成7年社長CEO就任。16年会長CEO。23年取締役名誉会長取締役会議長。26年公益財団法人日本生産性本部 会長。著書に『国境は越えるためにある』(日本経済新聞出版社)など。