世界初のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」を開発し、人類社会に大きな功績を残した杉本八郎氏。その開発の裏には、寝ても覚めても研究に打ち込む弛まぬ精進があったという。一時は研究職から離れざるを得ない逆境に立たされながらも、杉本氏は認知症によって苦しむ人々を救いたいという一念を失わなかった。アリセプトは症状の進行を遅らせることは可能だが、根治はできない。2019年喜寿を迎えるいまなお、根本治療薬の開発に邁進している杉本氏の挑戦の軌跡と研究開発に懸ける思い、そして物事を成し遂げる要諦――。
同志社大学生命医科学部客員教授、グリーン・テック社長
杉本八郎
すぎもと・はちろう
昭和17年東京生まれ。36年東京都立化学工業高校卒業後、エーザイ入社。在職中の44年中央大学理工学部卒業。平成2年人事部採用プロジェクト担当課長、8年アリセプトが米国で承認され発売開始。9年筑波研究所副所長、12年創薬第一研究所所長。10年薬のノーベル賞といわれる英国ガリアン賞特別賞受賞。15年同社を定年退職し、京都大学大学院教授。23年同志社大学生命医科学部客員教授。26年グリーン・テック社長就任。薬学博士。