2019年7月号
特集
命は吾より作す
インタビュー①
  • クロスエフェクト社長竹田正俊

ビジネスとは大勢の
お客様に貢献すること

ドラッカーから学んだ人生と経営の法則

本物そっくりの心臓模型をはじめ、依頼があったアイデアを120%の形で具現化する試作品メーカー・クロスエフェクト。2000年の創業以来、事業を発展させてきた背景にはドラッカーの経営哲学があったという。竹田正俊社長に人生と経営で大切なこととは何かを伺った。

この記事は約13分でお読みいただけます

労働集約型産業ではなく開発の仕事

——御社は高い技術力を武器に、これまでにない多様な製品を生み出されていると伺いました。

3Dプリンター(立体印刷機)をはじめとした最先端技術を用いた、お客様の開発支援、試作品の製作を得意としています。
具体的には医療機関と提携して作成した、手触りから肉質、内部構造まで本物そっくりの心臓模型がいま非常に注目を浴びています。
他にも、オムロンさんの遠隔カメラの製品デザインを手掛けたり、NTT西日本さんから依頼を受け、特殊なリモコンを製作したりしました。すべての商品に共通するのは、短期間で試作を何度も繰り返して完成度を高めてきた点です。
試作とは文字通り「試して作る」ことなので、できる限り納期を短くし、お客様に喜んでいただけるよう心掛けているんです。

——お客様に寄り添ったものづくりをされているのですね。どういうきっかけでこの道に進まれたのですか?

父が京都で三洋電機の下請けの町工場を経営していて、経営者としての後ろ姿を見て育ったので、いつの頃からか自分も会社を興したいと夢を抱くようになりました。
父の後を継ぐのは当然という雰囲気もあったんですけど、立命館大学を卒業した1996年から4年間、アメリカのシリコンバレーに留学したことで、価値観がガラッと変わりました。

——1990年代のシリコンバレーといえば、Appleアップルが急成長し、GoogleグーグルなどのIT企業が次々に創業された時代ですね。

そうですね。父の事業は典型的な労働集約型産業で大量生産を行っていたんですけど、これからの時代は知識や経験を基に新しいものを生み出す「開発」の需要が高まると痛感したんです。
ビジネスの手段にはこだわっていなかったので、当時の日本のものづくりの現場で導入されつつあった3Dプリンターに着目し、帰国した2000年、26歳の時に3次元データを作成する事業をマンションの一室で開始しました。

クロスエフェクト社長

竹田正俊

たけだ・まさとし

昭和48年京都府生まれ。平成8年立命館大学卒業後、米国シリコンバレーに4年間留学。12年マンションの一室で3Dのデータ作成サービスを開始し、翌年試作専門の会社「クロスエフェクト」を設立。21年心臓の3Dモデルを開発。23年3D心臓モデルをはじめとした医療関係に特化したクロスメディカルを設立。25年「第5回ものづくり日本大賞」にて最高賞である内閣総理大臣賞を受賞。著書に『「世界一速い会社」の秘密』(ダイヤモンド社)がある。