2021年4月号
特集
稲盛和夫に学ぶ人間学
我が心の稲盛和夫⑥
  • アスカコーポレーション会長阪 和彦

利他の心

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〝赤い絆〟で結ばれた稲盛塾長とのご縁

早いもので、稲盛塾長と初めてお目にかかってから40年の月日が流れました。当時勤めていた光陽鍍金めっき工業所は、京都セラミック(以下・京セラ)から鍍金の仕事をいただいていました。京セラの社員さんたちが毎晩、20時頃に「阪さん、きょう中に鍍金をしてくれませんか」と品物を持って来られ、まだ20代と若かった私はそれに鍍金をつけて深夜の2時、3時にお届けしていたのです。

ある日、納入先に品物を届けに行くと、倉庫の門が閉まっていたことがありました。仕方がないのでへいを乗り越えて納品しようとしたところ、巡回中のパトロールカーに泥棒と間違えられ、交番に連れて行かれてしまったのです。警察に事情を説明してもなかなか解放してくれないため、京セラの方に電話をして迎えに来ていただき、無事、無罪放免となりました。

そして1972年、京セラが山科やましなに新社屋を建てられた時の第1回納涼会で、稲盛塾長は次のようにおっしゃり、私と固い握手をしてくださったのです。

「こうして京都セラミックも新しい立派な社屋を建てることができました。これも本日、来ていただいている協力会社の皆さま方のお陰です。特に阪さんは深夜に納品に来て、泥棒に間違われて京セラの社員が迎えに行ったのですよ。阪さん、ありがとう!」

以来、特に京セラ資材部の方に大変可愛かわいがっていただき、結婚式にも多くの方々にお祝いに来ていただきました。

いま思い返しても、稲盛塾長と私は何か〝赤い絆〟のようなもので結ばれていたのではないかと感じるのです。

アスカコーポレーション会長

阪 和彦

さか・かずひこ

昭和21年京都府生まれ。39年光陽鍍金工業所入社。49年上田鍍金入社。50年上田鍍金工業所入社。平成元年同社社長。5年アスカコーポレーション株式会社へ社名変更。28年7月より現職。