2025年10月号
特集
出逢いが運命を変える
対談
  • ナポレオン・ヒル財団CEOドン・グリーン
  • アチーブメント会長兼社長青木仁志

ナポレオン・ヒルの
成功哲学を
かく生かせり

1937年にアメリカで出版され、90年近く経ついまなお世界中で愛され続け、累計1億冊を突破している名著がある。ナポレオン・ヒル『THINK AND GROW RICH』(邦題『思考は現実化する』『成功哲学』)。自己啓発の源流とも呼ばれる本書は、ナポレオン・ヒルが20年間で500人以上の成功者を取材・研究し、そこから見出した共通点や成功法則を13のステップに体系化したもの。本書との邂逅によって、人生が劇的に好転したというドン・グリーン氏と青木仁志氏のお二人に、その活学の足跡を語り合っていただいた。1冊の本との出逢いが運命を変えることを私たちに教えてくれる。

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    この対談取材はドン氏が来日された今年(2025年)3月、東京・六本木にある国際文化会館で、アチーブメント㈱のスタッフによる通訳を介して行われた。

    ナポレオン・ヒルを通じた運命的な出逢い

    青木 昨晩の会食の席で少し申し上げましたが、『致知』は私も愛読していて、人間力開発や自己啓発といった、よりよく生きるための情報を47年発信している日本ナンバーワンの月刊誌です。

    ドン そのような高名な月刊誌で敬愛する青木さんと対談の機会をいただき、大変嬉しく思います。

    青木 今回は「出逢いが運命を変える」というテーマだそうですが、ドンさんとの出逢い、そしてナポレオン・ヒル博士(以下ヒル博士)との出逢いは私にとってかけがえのないものです。私は23歳の時にヒル博士の著書と出逢い、本当に人生が大きく好転しました。この感謝の思いが揺らぐことは決してありません。その後、1987年に32歳でアチーブメントという人材教育コンサルティングの会社を創業して以来、人がいかに思考を現実化し、物心両面の豊かな人生を手にできるか、ヒル博士の成功哲学を土台にした研修プログラムをこれまで延べ50万人以上の方に提供してきました。
    一方、ドンさんはナポレオン・ヒル財団のCEOとして、ヒル博士の成功哲学を世界中に広めてきましたね。代表作にして歴史的名著である『THINK AND GROW RICH』(邦題『思考は現実化する』『成功哲学』)は1937年の発刊以来、全世界で累計1億冊以上販売されているビジネス書であり、世界でバイブル(『聖書』)の次に多く読まれています。
    こころざしを同じくするドンさんにぜひ一度お会いしたいと思い、昨年(2024年)5月にアメリカ南東部バージニア州のワイズまで足を運びました。

    ドン ヒル博士の本は世界の中でも日本でよく読まれているため、私はかねて日本の方に特別な親近感を持っていました。ただ、実際にどういう方が読んでいるのかは知らなかったんです。そんな中、ある時青木さんのお名前と功績を耳にし、非常に興味を抱いたのがきっかけでした。

    ナポレオン・ヒル財団CEO

    ドン・グリーン

    1942年アメリカ合衆国バージニア州ワイズ郡で炭鉱夫の息子として生まれる。貧しい家庭環境の中で起業家精神を育み、15歳で初めてベンチャービジネスを手掛ける。銀行業界で卓越した実績を築き上げ、最年少支店長を経て、41歳でブラックダイヤモンド銀行CEOに就任。経営危機に陥っていた同行を再建した後、60歳でナポレオン・ヒル財団CEOに就任。ナポレオン・ヒルの成功哲学を世界に広めるべく、書籍の出版や教育プログラムの開発、奨学金制度や大学での講義を通じて、次世代のリーダー育成に尽力。バージニア大学ワイズ校財団理事会会長。著書に『望む人生の叶え方』(アチーブメント出版)。

    驚くほど多い2人の共通点

    ドン 実際にお会いして強く共感を覚えましたし、話せば話すほど共通点が多くあって、驚きを隠せません(笑)。

    青木 本当に(笑)。ドンさんとは出逢ってまだ1年くらいのお付き合いですが、どこにかれるかと言えば、とにかく〝ささげる人生〟を生き抜いていらっしゃる。自分が何を得るかではなく、どうしたら人々に与えることができるか。ドンさんは家族をすごく大事にしていますし、ナポレオン・ヒル財団のトップとして、特にワイズという貧しい炭鉱の町に住む子供たちに大学進学の奨学金を出し続けています。

    ドン バージニア大学ワイズ校は学生の85%が奨学金なしには通えません。そういう貧しい学生を支援することで、彼らの人生が開かれ、卒業後に社会で活躍し、寄付や指導の形で大学に恩返しをする好循環が生まれているんです。

    青木 私が訪問して感じたのは、ヒル博士とドンさんが生まれ育ち、決して経済的に恵まれているとは言えないワイズの地に、財団の拠点を構えていることに深い意味があるということです。
    実際に現地の学生たちのお話を伺いましたが、「ここで成功哲学を学んでいなければ、大学を中退していたかもしれない」「地域を変えるために起業したいと本気で思えるようになった」といった声に胸が熱くなりました。
    ドンさんはまさにではなくの心の持ち主であり、大切な人を大切にする生き方をまっとうし、世界に貢献されている。そういう人としてのあり方を心から尊敬しています。そして何よりも大きかったのは、ヒル博士の教えを共通言語としていることですね。

    ドン ええ。私自身もヒル博士の本から多くのことを学び、人生を変えてもらいました。
    青木さんと私はその生い立ちも含めて共通点が多い。私は炭鉱夫の息子としてバージニア州の山奥で育ち、貧しい環境にありながら15歳でビジネスを興し、いくつもの新規事業を成功させました。 青木さんも父親が鉱山開発の夢を追っていた上に、幼い頃に両親が離婚して貧しい少年時代を過ごしたと聞いています。お互い貧乏の家庭で育っている。

    青木 そう。その境遇から抜け出そうとするエネルギーに似たものを感じました。

    ドン その後、私は銀行家として最年少支店長からCEOとなり、経営危機に陥っていた銀行を黒字転換させ、60歳の時にナポレオン・ヒル財団に招かれ、現在に至ります。ヒル博士の説く強い願望と行動の結果だと信じています。
    どんなに貧しく苦難を抱えた人でも、成功哲学を実践すれば人生を切り開くことができる。青木さんと私の歩みが何よりそれを証明しているのではないでしょうか。

    アチーブメント会長兼社長

    青木仁志

    あおき・さとし

    1955年北海道生まれ。10代からセールスの世界に入り、国際教育企業ブリタニカ、国内の能力開発&人材開発コンサルティング研修企業を経て、1987年32歳でアチーブメント設立。以来、延べ51万名の人財育成と、9,000名を超える中小企業経営者教育に従事している。自ら講師を務めた公開講座『頂点への道』講座スタンダードコースは28年間で毎月連続700回開催達成。2024年ナポレオン・ヒル財団特別顧問に就任。2025年同財団のリーダーシップディベロップメント部門にて、アジア人初のゴールドメダリストとなる。著書68冊。監訳書に『巨富を築く思考法 THINK AND GROW RICH』(アチーブメント出版)。