2024年6月号
特集
希望は失望に終わらず
インタビュー3
  • ソプラノ歌手小早川 由起子

夕暮れには涙が宿っても
朝明けには
喜びの叫びがある

20代で難病を患い、二度の死の淵を乗り越えてきた小早川由起子さん。現在はソプラノ歌手として、生かされている感謝と喜び、そして祈りを込めて音楽活動に従事している。自身の闘病生活を振り返りつつ、希望の光を抱いて生きるヒントを伺った。

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生きる喜びを歌に乗せて

──以前、小早川さんのコンサートの様子をテレビで拝見しましたが、透明感のある歌声に大変感動しました。大病されたことをまったく感じさせない、祈りと感謝の込められた素晴らしい会でしたね。

ご覧いただきありがとうございます。私はクリスチャンですので主にキリスト教会からご依頼をいただき、年間3~10回ほどコンサートをさせていただいています。つい先日も1時間半のコンサートを行いまして、賛美歌やクラシックなどの歌唱に交えて、闘病体験や病を通じて気づいた信仰の素晴らしさをお伝えしています。
後ほど詳しくお話ししますが、私は23歳の時に肝臓の難病を発症し、これまで二度、肝臓の移植手術を受けています。現在は体調が安定していますが、2014年に再々発していまして、治療薬や治療法がない疾患ながらも、薬を20種類ほど服用しながら大学病院への通院を続けています。長年のステロイド薬の副作用で糖尿病や骨粗鬆症こつそしょうしょうも併発し、先日も突然耳が聞こえなくなってしまうなど体の不調は尽きません。それでも、何度も余命宣告を受けながら生かされているこの命への感謝と、闘病を通して神様が私にどんなに素晴らしいことをしてくださったかを伝えたいという想いを込め、コンサート活動などに力を注いでいるんです。

──病を押して音楽活動を。

やっぱり小さい頃から歌うことが大好きだったので。高校生の時には子供たちに歌ってあげる歌のお姉さんのような活動がしたいと夢見ていました。経済的な理由から両親の反対があったため音楽大学への進学は断念し、短大卒業後は就職して、自分で稼いだお金で声楽の先生に師事して勉強するようになったんです。
「音楽大学に行くことよりも、どんな先生に習うかが大事だから、あなたが本気なら私が音大を出た人以上にしてあげる」、そう言って本当に厳しい指導をしていただけたおかげで、いまの私があると思っています。

ソプラノ歌手

小早川 由起子

こばやかわ・ゆきこ

ソ自由学園卒業。昭和63年より宮越昌子氏、平成25年からは古瀬まきを氏に師事し声楽の研鑽を積む。23歳で肝臓の難病を発病し、2度にわたる生体肝移植手術により命を救われる。各地の教会や病院で闘病体験の証と賛美のコンサートを行う他、ホスピスでの独唱ボランティアに従事。23年宇治鳳凰ロータリークラブより鳳凰賞を授与。29年にCD『AmazingGrace~愛と恵みの中で~』、令和3年『主の愛に包まれて』をリリース。