2022年10月号
特集
生き方の法則
インタビュー①
  • ミズホールディングス会長溝上泰弘

薬を売るのではなく
健康を売る

故郷・佐賀県で母親が営んでいた薬局の経営を引き受け、マーケットの小さな地方のハンディをものともせず、年商130億円、社員数700名を超える企業グループへと発展させた溝上泰弘氏。その経営の拠り所となったものは何か。グループが標榜する「薬の売れない薬屋」に込められた思いを交えてお話しいただいた。

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薬の売れない薬局を理想に

——御社が運営されている複合施設「みずがいえ」(佐賀市水ヶ江)の中にある私設図書館「まちなかライブラリー鎌田文庫」に、弊社の本をたくさん置いてくださっていて、とても感激しました。

当グループの主業務は薬局の経営ですが、薬局の社会的責任を突き詰めていくと人々の健康に行き着きます。薬屋の私がこう申し上げると奇異に聞こえるかもしれませんが、本当は誰もが薬を飲まずに済むような健康を実現できればそれに越したことはない。
ですから私共は、「薬の売れない薬屋」を理想に、社業を通じて人々の健康長寿を実現し、街のお役に立つことを追求しておりまして、その一環でこの図書館を立ち上げたのです。
きっかけは、長野県を健康寿命で全国1位にすることに貢献された医師の鎌田みのる先生とのご縁でした。健康寿命を延ばすためには読書が大変有効だと教わったものですから、鎌田先生の名を冠し、先生から薦められた本と共に有志の方々にもたくさんの本をご提供いただいて、街の皆さんと一緒につくる図書館にしたんです。
これは決して致知出版社さんが取材に来られたから申し上げるわけじゃないんですが、私が人生で最も影響を受けたのが、30年くらい前から読み始めた『致知』です。私がここまでやってこられたのは、『致知』に学んだ生き方の法則を実践してきたからに他なりません。ですからその学びを一人でも多くの方と共有したいと考え、図書館に「致知出版社コーナー」を設けて、『致知』のバックナンバーや御社の本を多数ご紹介しているんです。

——ありがとうございます。ところで、冒頭におっしゃった「薬の売れない薬屋」とは意表を突いた考え方ですね。

人が欲しているのは本来薬ではなく、健康です。街の皆さんに健康になっていただくのが我われの本来の仕事であって、それで食っていけないならしょうがないという思いがあります。
「薬というモノを売るのではなく、健康になるコトを売る」。こうした考え方をもとに、調剤薬局や化粧品専門店の他に漢方薬局、健康支援薬局、医療モールなど新業態の開発に挑んできました。2020年には長男が脳神経外科病院を開院し、さらに社会福祉法人、認定こども園、発達障害児の施設や高齢者のための複合施設なども運営して、ウェルビーイング・身心共に健康で幸せ(健幸)な街づくりに取り組んでいるのです。

ミズホールディングス会長

溝上泰弘

みぞかみ・やすひろ

昭和19年佐賀県生まれ。45年東京薬科大学卒業後、商社勤務を経て、母親の営む薬局の経営に携わる。平成4年㈱ミズ設立、社長に就任。8年より会長。