2017年1月号
特集
青雲の志
インタビュー②
  • 海上自衛隊 護衛艦 やまぎり 艦長 2等海佐大谷三穂

この国は我が手で護る

海上自衛隊初・女性艦長への道

今年2月、海上自衛隊初となる護衛艦の女性艦長に就任した大谷三穂2等海佐。防衛大学校女性第1期生として入隊し、「艦長になって国を護る」という青雲の志を胸に、道なき道を切り拓いてきた大谷さんに、その歩みを伺った。

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ぬるま湯に浸っている自分を変えたい

──今年2月に、大谷さんは海上自衛隊で初めて護衛艦の女性艦長に就任されました。

はい。女性初ということで海上自衛隊としても重い決断をしてくださったと思いますし、私は艦長になることをずっと目標にしてきましたから、本当に感謝しています。
私が艦長を務めている護衛艦は「やまぎり」といいまして、主に日本近海の警戒監視任務にあたっています。
海の上では、何かあればすぐに報告が上がってきますし、24時間体制というか、常時訓練をやっているような感じですね。

──乗員はどれくらいいらっしゃるのですか。

約200名です。ほとんどが男性で女性は1割もいません。

──男性ばかり、200名を束ねるのは大変なことです。

そうですね。ただ、「国を護る」という思いには男性も女性も違いはありません。ひとたび出航すれば、射撃の許可など、すべての決定権が私にありますから、そういう重責は常に感じながら任務に向き合っていますね。

──そもそも、大谷さんはどのようなきっかけで自衛官の道を志したのでしょうか。

もともと私は考古学者を目指して京都の一般大学に通っていました。それで一人暮らしをしている時に、たまたまテレビで湾岸戦争の映像を見たんですね。
自分は大学生として自由を謳歌して、しかも両親の援助で一人暮らしをさせてもらっている。そういうぬるま湯の生活をしている一方で、テレビの向こうでは戦争が行われているというのがショッキングで……。自分はいまの生活を続けていいのかな、何か国のために役に立てないかなと、自分の人生を変えたくなったんですよ。
ちょうどその時、自衛隊の幹部候補生を育成する防衛大学校が女性に門戸を開くという新聞広告を目にしまして、あっ、これだと。
それで大学を2年の時に中退して、防衛大学校を受験し、無事合格することができまして、1993年に「女性第一期生」として防衛大学校に入校しました。

──自衛官の道に進むことをご家族はどう受け止められましたか。

父は普通の公務員だったんですけど、「防衛大学校は女性が入るところじゃない」と、反対しました。母も私を女性らしく育てたかったみたいですね(笑)。入校が決まってからも、両親からは嫌になったらいつでも辞めて帰ってきなさいと言われていました。

──両親に反対されても、志は揺るがなかった?

ええ。むしろ両親に帰ってきていいよと言われると、逆に辞められないんですよ。卒業するまでの4年間、頑張ってやってみるからと、両親を説得しました。

海上自衛隊 護衛艦 やまぎり 艦長 2等海佐

大谷三穂

おおたに・みほ

昭和47年大阪府生まれ。平成4年防衛大学校に女性第1期生として入校。卒業後海上自衛隊に入隊。護衛艦「あさぎり」副長、練習艦「しまゆき」艦長などを経て、28年女性初となる護衛艦の艦長に就任。