「2050年の日本」を考えるためには、まず日本の皆さんがアメリカとはどのような国なのかを正しく理解することが必要だと私は思っています。おそらく多くの方は、アメリカは世界をリードする超大国であり、自由と民主主義を守る正義の国だというイメージを持たれていることでしょう。しかし、一般のアメリカ人、特に私のような南部(ルイジアナ州)出身者からすれば、現実のアメリカはその反対といってよいのです。
そもそもアメリカの歴史は、イギリスを中心とするヨーロッパから渡ってきた白人たちが、先住民を迫害し、黒人など非白人を奴隷化・搾取する植民地から始まりました。そして1775年に本国イギリスとの紛争が始まり、13の植民地が独立、一つにまとまることでアメリカは建国されたのです。
その後、アメリカは政治体制や産業、奴隷制度などを巡って北部と南部が対立を深め、1861年に南北戦争が勃発しました。4年に及ぶ戦いの末、最終的には、リンカーン率いる北部が勝利し、南北戦争は終結します。それによりワシントンの連邦政府を中心とした「ニュー・アメリカ」が創立されるのですが、決して国家として一枚岩になったわけではありません。意外に思われるかもしれませんが、アメリカにはいまだに北部と南部の対立や分断、非白人への搾取が確かに存在するのです。
南北戦争では、南部の人々は北軍により無差別に殺戮され、財産は徹底的に破壊されました。「ヤンキー」という言葉も、語源の説が様々ですが、南北戦争の前からも、暴虐な北軍への蔑称として南部で言われるようになったものです。ですから、私が育った南部の一部地域には、「いつの日かワシントンに対して南北戦争の仇を討ってやる」という感情がいまなお残っており、同じアメリカでも、北部と南部では外国といっていいほど文化的に異なるものがあります。
そしてもう一つ知っていただきたいのは、権力を握ったワシントンの連邦政府はどんどん独裁的な傾向を強め、一般のアメリカ国民の幸福とは何の関係もない、一部エリート層や富裕層のための政治を続けてきたということです。
例えば、戦争。遥か遠いベトナムやアフガニスタン、イラク、リビア、シリア、ウクライナなどの地で、なぜアメリカは果てしない戦争を続け、莫大な資金を注ぎ続けているのか? 戦地から戻って来た兵士たちは、身体に障碍を負い、無辜の女性や子供を殺してしまった罪悪感に苛まれています。一般国民はこんな戦争は早くやめてほしいと願っているのです。
それから、ワシントンは、巨大企業の利益に繋がる新自由主義的な経済・金融政策を進め、国内産業・中小企業は衰退し、貧富の格差がものすごく広がっています。
また特にリベラルな民主党政権下では、過激な左翼思想が国民に押しつけられてきました。いまのアメリカでは、キリスト教信者以外を差別することに繋がると、12月に「メリークリスマス」という言葉は公には使えませんし、行き過ぎた「LGBTQ+」(性的少数者)の尊重のために、子供に性転換手術を受けさせたり、ホルモン剤を投与したりすることが当たり前に行われています。もちろん、性的指向は個人の問題であり、立ち入るべきではありませんが、望めば男性が女性に、女性が男性に自由になれるというのは明らかに行き過ぎですし、多くのアメリカ人がそんな社会は望んでいません。
さらにワシントンは情報統制を行い、国民に真実を知らせまいとしてきました。私も子供の頃、南北戦争では南部が悪者であり、北部は正義という偏った歴史観、〝神話〟を教えられ、後に自分で歴史を勉強するまでそれを信じていました。最近ではイーロン・マスク氏がツイッター(現・X)を買収し、現政権に都合の悪い情報が流れないようにツイッターが操作されていた事実を公表しました。
アメリカは超大国、自由と民主主義の国というよりも、ワシントンの一部エリートが支配する〝大きな植民地〟と呼んだほうがよいでしょう。そしてここに、既存の支配層と戦い、アメリカ国民のためのアメリカを取り戻すことを掲げるドナルド・トランプ氏を、アメリカ国民が再び選んだ理由があります。今回の大統領選挙では、白人から黒人、ヒスパニック、男性から女性、一部の民主党支持者まで、トランプ氏に投票しました。アメリカ国民は、ワシントン帝国の支配はもううんざりだと、明確な意思表示を行ったのです。