2020年1月号
特集
自律自助
インタビュー①
  • 西精工社長西 泰宏

自律自助の社風は
かくつくられた

社員の働きがいや幸せを実現する経営を徹底して追求し、2017年に「ホワイト企業大賞」を受賞するなど、全国から注目を浴びている西精工(徳島県)。しかし、かつては社員に自社や製品への愛着がなく、社員同士できちんと挨拶や掃除もしないといった、現在とは正反対の社風だったという。西精工の西 泰宏社長は、いかにして全社員が生き生きと主体的に働く自律自助の社風をつくり上げていったのか。その改革の軌跡を語っていただいた。

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ずっと貫いてきたのは会社の「土壌づくり」

——御社は2017年に、社員の幸せと働きがいを大切にする企業として「ホワイト企業大賞」を受賞するなど、その社風や取り組みが全国から注目を集めています。

当社がずっとぶれずに力を入れてきたのは、目先の利益につながるようなことではなく、社員教育の徹底や社員が心から幸せに働ける職場づくりといった「土壌づくり」なんですね。土壌がしっかりしていれば、それがおのずと製品の品質やお客様の評価に繋がっていくはずだと考えてきたんです。
例えば、「経営理念」や「創業の精神」を現場の社員に浸透させるために、当社が大切にしている200の価値観を一冊にまとめた「西精工フィロソフィー」を活用し、毎日1時間の朝礼を七年以上続けてきました。京セラ創業者の稲盛和夫さんもおっしゃっていますが、やっぱり、毎日感謝したり、反省していないと、心構えや人間力はすぐ低下してしまうんですよ。

——毎朝1時間とはすごいですね。全社員で行っているのですか。

ええ。部署ごとに全員参加で行っています。4~5人の小グループをつくり、「西精工フィロソフィー」の内容について話し合い、各グループの代表が発表する時には、「こうじゃないか」「ああじゃないか」とお互いに突っ込んだりしながら、深掘りしていく。それが「経営理念」や「創業の精神」の落とし込み、社員同士のベクトル合わせに繋がっているんです。

——御社の社員さんのお客様への対応は素晴らしいと評判ですね。

それも、特に私が指示しているわけじゃなく、「経営理念」や「西精工フィロソフィー」に照らし合わせて、「お客様が来たら皆で元気よく挨拶しよう」と、社員たちが主体的に判断してやっていることなんですよ。トップダウンで指示しても、やらされ感ばかりで誰も元気よく挨拶なんてしません。

——社員の主体性を引き出すために、経営トップとして特に心掛けていることはありますか。

それは、「もっとこうすればいいのに」と思ったことを、トップが社員に指示したり、ストレートに伝えないことです。ヒントは与えても、社員が自ら気づいて動くまでじっと我慢して最低10年は待つ(笑)。時間はかかるかもしれませんが、それが社員の主体性を引き出す一番の近道なんですよ。

西精工社長

西 泰宏

にし・やすひろ

昭和38年徳島県生まれ。63年神奈川大学を卒業。広告代理店の営業職を経て、平成10年西精工に入社。18年同社代表取締役専務、20年より現職。