2018年8月号
特集
変革する
インタビュー
  • 福井県立福井商業高等学校教諭五十嵐裕子

チアダンス
全米5連覇への道は
こうして始まった

チアリーダー部JETS顧問五十嵐裕子さんに聞く

チアダンスに魅せられ、全くの未経験ながら全米チアダンス選手権大会優勝という目標を掲げ、新たに赴任した福井県立福井商業高等学校のバトン部をチアリーダー部へと変革した体育教師、五十嵐裕子さん。その僅か3年後の2009年にフロリダ州オーランド開催の全米チアダンス選手権大会で念願の初優勝を飾ると、優勝は通算7回に及び、5連覇も達成した。さらなる高みを目指して、いまもチアダンスを通じた人づくりに邁進する五十嵐さんに、挫折に屈することなく「夢は叶う」「人は変われる」という信念を貫いてこられた歩みをお話しいただいた。

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何がなんでも海を越える

——五十嵐先生率いるチアリーダー部JETSジェッツは、フロリダ州のオーランドで毎年開催されている全米チアダンス選手権大会において、昨年(2017)5連覇を達成されたということで注目が集まっていますね。

ありがとうございます。

——今年(2018)2月にはラスベガスで開催されている全米選手権でも優勝されたとお聞きしましたが、これは新たな舞台で挑戦を始められたということでしょうか?

それについては事情がありまして、昨年までは日本チアダンス選手権大会の優勝チームを含めた上位3チームが、推薦枠としてオーランドの大会に参加が認められていたんです。ところが主催者側の意向で、その枠が今年からなくなってしまったんですよ。
これには困りました。生徒たちはアメリカを目標にずっとやってきたのに、一瞬にしてその道が閉ざされてしまったんです。でも、私たちには何がなんでも海を越えたいという思いがありました。そこで日本チアダンス協会にお願いして、アメリカであればどこでも構わないという条件で、日本チームが参加できる大会を探してもらうことにしたんです。
ただ、その話が持ち上がったのが昨年末のことで、全米での大会は年明け早々に行われることから、万が一にも参加できない場合があるじゃないですか。そこでその時のことも考えて、同時進行でアメリカ公演をやろうということで動いたんです。

——あくまでアメリカにこだわられたわけですね。

そうです。それに、行くからにはショーの本場ニューヨークがいいと。とにかく何か手立てはないかと探しているうちによい業者さんと巡り合うことができ、そのおかげで初のアメリカ公演が今年の12月26日に実現することが決まったんですよ。

——それは楽しみですね。

しかも、ラスベガスの全米選手権への参加も年明け早々には決まったので、生徒たちはもう大喜び。何だか不思議なくらいに、いつも運がいいんですよ(笑)。

——ちなみに「全米」をかんしたチアダンスの大会がアメリカに複数あるのはなぜでしょうか。

そのことはアメリカに行って初めて知ったんですけど、チアダンスに関しては全米で一本化がされていないため、各地の主催団体がそれぞれに「全米」と冠した大会を開催しているんです。
最近になって一本化の動きが出てきたようですが、それだけアメリカでは競技人口の裾野すそのが広いということなんだと思います。

——それでも、そのうち2つの大会を制してこられたのですから、素晴らしい実績ですね。

地域の方々も含めて、5連覇といったことに喜んでくださるのは嬉しいんですけど、必ずしも勝つことだけに焦点を当てているわけではないので、少し複雑な心境ではあるんです。一所懸命競技に取り組んでいるうちに、いつの間にかたくさん優勝していたなというのが実感ですね。

福井県立福井商業高等学校教諭

五十嵐裕子

いがらし・ゆうこ

昭和43年福井県生まれ。福井大学卒業後、教職の道に進む。16年福井県立福井商業高等学校に赴任。18年チアリーダー部「JETS」を立ち上げる。21年フロリダ開催の全米チアダンス選手権大会のチームパフォーマンス部門で初優勝。同大会の優勝は通算7回で、25年から5連覇。30年ラスベガス開催の全米チアダンス選手権大会のバラエティー部門で初優勝。全日本チアダンス選手権大会のチアダンス部門(高校生編成)の優勝回数は6回。