2025年6月号
特集
読書立国
私の読書立国論③
  • お笑い芸人小島よしお

本は人生の
航海を導く羅針盤

「そんなの関係ねぇ!」「はい、おっぱっぴー」の芸で一世を風靡して以来、幅広い活躍を続けるお笑い芸人・小島よしお氏。業界きっての読書家として知られる氏は、いまYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」の運営や学習書の出版を通して子供たちの教育に情熱を傾けている。なぜ人は学ぶのか──。小島氏が実践から掴んだ学ぶ楽しさ、「読書の力」についてお話しいただいた。

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子供たちに勉強する楽しさを伝えたい

お笑い芸人の私が子供たちの教育に携わるようになったのは、コロナがきっかけでした。緊急事態宣言によって全国の学校が休校になる中で、親交のある放送作家の方から、「子供向けの授業の動画をやってみない? 小島君が子供たちに勉強を教えることはとても説得力があると思うから」とお声がけいただいたのです。私が教育学部出身であること、かねて子供向けのお笑いライブに取り組んでいることを知ってのことでした。

そうして2020年、都内の稽古場をスタジオに、YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」を開設。放送作家さんのチームや塾の先生にアドバイスをいただき、試行錯誤しながら動画を制作していきました。お笑いネタをつくる時より時間と労力を費やしていたかもしれません。

ただ、どうすれば分かりやすく教えられるのか、様々な道具をつくったり工夫したりするのは意外に楽しく、また何より当初から多くの親御さんや子供たちが番組を見て、嬉しいメッセージを寄せてくださったことが配信を続けるモチベーションになりました。

例えば、「九九」の番組では、「ゴリラ(5)とゴリラ(5)=ニコニコ(25)」など、動物の絵を見ながら歌って踊って楽しく学ぶ工夫をしてきました。それを見た親御さんたちからは、「コロナ禍で家にいる子供に勉強を教えなくてはならず、どうしようか悩んでいました。でも、小島さんの番組を見たら子供が『分かる!』と言ってくれてすごく助かりました」などの声をいただきました。

おかげさまで現在、チャンネル登録者数は16万8,000人を超えるまでになりました。手探りで始めた取り組みでしたが、いまでは一人でも多くの子供たちが「勉強=楽しくない」という苦手意識を払拭ふっしょくして、学びを通じて新しい世界を知り、よりよい人生を実現していってほしいという願いを込めて番組制作に向き合うようになりました。そして「学ぶ習慣を身につけることが人生を支え、導く羅針盤になる」――これは私自身のこれまでの実感でもあるのです。

お笑い芸人

小島よしお

こじま・よしお

昭和55年沖縄県生まれ。早稲田大学教育学部在学中に5人組コントグループ「WAGE」のメンバーとして芸人デビュー。平成18年よりピン芸人として活動を始め、19年「そんなの関係ねぇ!」「おっぱっぴー」の芸でブレイク。令和2年4月からYouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」で子供の学習を支援する動画を公開。『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(朝日新聞出版)など著書多数。