2018年6月号
特集
父と子
  • 評論家木原武一

偉人の父に学ぶもの

10組の父と子がいれば、10通りの向き合い方がある。優れた業績を残した偉人においても、その才能を育んだ父親のありようは一様ではない。教訓に満ちた先例をとおして、父と子のよりよい向き合い方を考えてみたい。

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教え、教えられる関係こそが父子の理想

イギリスの哲学者バートランド・ラッセルは、その著書『幸福論』において、「親になることは人生最大の幸福である」と説いている。
 
子供が生まれると、その成長の過程で親は様々なことを教えられる。無邪気な表情、思いがけない言動、その一挙手一投足から気づかされ、学ばされることは限りない。一人の息子を育てた経験に照らして言うならば、父と子の関係は、必ずしも親の側から一方的に教えるだけの関係ではない。教え、教えられる関係こそが理想的であり、我が子とそういう関係を築いてこそ、父親としての幸福も見出せることを私は実感している。
 
もちろん父と子の向き合い方は様々である。そこで本稿では、人々を感動させる偉大な業績を残した偉人の生い立ちを通じて、父と子の様々な関係について考えてみたい。

評論家

木原武一

きはら・ぶいち

昭和16年東京生まれ。東京大学文学部ドイツ文学科卒業。著書に『大人のための偉人伝』『続 大人のための偉人伝』『天才の勉強術』(いずれも新潮選書)『あの偉人たちを育てた子供時代の習慣』(PHP研究所)などがある。