「一眼は遠く歴史の彼方を そして一眼は脚下の実践へ」──。
哲学者・森信三師の言葉である。歴史の流れを見つめつつ、我はどう生くべきかを考え、日々の為すべきことを実践していく大事さを説いている。その意味で、本誌には忘れられないことがある。ヤナセの梁瀬次郎氏から聞いた話である。
昭和20年、第二次大戦敗戦。日本は都市という都市が空爆を受け、全土が焦土と化した。その敗戦から僅か19年後の昭和39年、日本は新幹線を走らせ、高速道路を建設し、東京オリンピックを開催した。このことについて、梁瀬氏は親しくしていた元総理の吉田茂氏から質問されたという。
「梁瀬君、日本は何の資源もない国だ。その国がたった19年でこれだけの復興を遂げたのはなぜだか分かるか」