2018年3月号
特集
てん ざいしょうずる
かならようあり
  • 児童虐待防止機構オレンジCAPO理事長島田妙子

すべてを肯定して生きる

虐待を生き抜いた私だからできること

幼少期から実父と継母による壮絶な虐待を受け、中学2年生で保護されるまでの間、2度も命を落としかけ、一度は自ら命を絶とうとした島田妙子さん。現在は過去の辛い経験を基に、児童虐待防止活動に取り組み、被害者を救うことはもちろん、加害者の心のケアにも力を注いでいる。そんな島田さんに今日に至るまでの足跡を赤裸々に語っていただいた。

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被害者のみならず加害者も救いたい

私は7歳の時から実父と継母から虐待を受けるようになり、中学2年生で児童養護施設に保護されるまで、2度も命を落としかけました。中学1年生の時には自ら命を絶とうとしたこともあります。

それでもいま、私がこうして生きていて、児童虐待防止活動に取り組んでいることを思うと、過去に起きたことは、すべて現在の活動のための出来事だったのではないかという気がしています。

ただ、つらい体験を乗り越えてきたという思いはありません。「忘れた」とも違い、「横に置いてきた」と表現するのが相応ふさわしいかもしれません。先日3年ぶりに自伝を読み返しましたが、それは「妙子ちゃん」の物語で、自分自身のことではないような不思議な感覚でした。

私は講演などでよく、「目の前のことを否定するのではなく、すべていったん肯定して、受け入れる」とお話ししています。過去を否定しても、何も変わりません。私自身、昨日までのことはもういいので、きょうから幸せになっていこうと、すべてを肯定し、受け入れながら生きてきました。

「加害者となってしまう人をも救いたい」との思いを込め全国各地で年間100回以上講演を行う」

現在、児童虐待防止活動の他にも、日本アンガーマネジメント協会認定のコンサルタントも務め、「自分の感情に責任を持つ」ことの大切さを伝えています。人間である限り怒りが生ずるのは当たり前で、大事なことはそれにどう対処するかです。アンガーマネジメントでは自分の感情を上手にコントロールするコツを学びます。
 
その代表例が「6秒ルール」です。怒りが沸点に達すると、脳からアドレナリンが大量に分泌され暴力的になります。その時に深呼吸をし、たった6秒間待つだけで、アドレナリン分泌が収まり、冷静さを取り戻せるのです。
 
こうした誰でも簡単にできる知恵を多くの人に広めることで、被害者を救うだけではなく、加害者となって苦しんでいる人も救いたいと思い活動しています。2010年から開始し、いまでは全国各地で年間100回以上講演するようになりました。

児童虐待防止機構オレンジCAPO理事長

島田妙子

しまだ・たえこ

昭和47年兵庫県生まれ。4歳の頃、両親の離婚で兄2人と児童養護施設に入所。7歳の時に父の再婚で家庭に復帰したが、継母と実父による壮絶な虐待が始まり、2度も命を落としかけ、中学1年生の頃には自殺未遂も経験。中学2年生で虐待が発覚し、養護施設へ。中学卒業後は独立し、住み込みで働く。平成22年、次兄が白血病で亡くなると、次兄の思いを引き継ぎ、児童虐待防止への活動を開始。著書に自伝の『e love smile1・2』(パレード)と『虐待の淵を生き抜いて』(朝日新聞出版)がある。