2023年7月号
特集
学を為す、故に書を読む
人生に活かす読書③
  • 福岡ソフトバンクホークス選手甲斐拓也

明日の成長に
祈りを込めて

第5回WBCで3大会ぶり3度目の世界一を掴んだ侍ジャパン。同チームの扇の要としての活躍が記憶に新しい甲斐拓也捕手は、育成選手からプロ入りし、苦節を経て史上初の記録を打ち立ててきた人物だ。幾多の恩師と書物を通じて交わり、自己鍛錬してきた軌跡を追う。

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躍進の原動力は監督と選手の呼応

——先般のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)では、さんが主戦捕手に選抜されたさむらいジャパンが世界中を大いに沸かせましたね。

小学1年生からずっと野球をやってきて、あの舞台でプレーができたことは幸せという他ないですね。今後の野球人生の大きな財産になる期間でした。

——監督を務めた栗山英樹さんは弊誌『致知』のご愛読者でもありますが、実際その指揮の下で戦い抜いてみて、いかがでしたか?

栗山監督は、選手をとことん信用してくれる方です。例えば言葉一つひとつに心を砕いているというか、要所要所で僕たち選手が「よし!」と奮い立つような言葉をかけてくださる。ですから、今回は単に優勝したいというよりも監督のために勝ちたい、何とか世界一の監督にしたいという思いが仲間同士でも強かったです。
僕がスタメンマスクをかぶった準決勝のメキシコ戦は、序盤から劣勢でした。それでも9回裏、最後の最後に逆転サヨナラで勝てたのは、そういう思いが根底にあったからだと感じています。
栗山監督は謙虚な印象が強いですけど、こと勝負事においては文字通り腹をくくっている、命を懸けていることが感じ取れるんです。開催に先立って代表選手が集められた時、「勝つためにやるんだ」と明言されました。WBCに懸ける思いがストレートに伝わってきて、僕たちの意識も変わりました。

——監督を中心に、選手のベクトルが勝利へ向かっていったと。

読書家であることは知っていましたので、栗山監督が北海道日本ハムファイターズを率いていた数年前、対戦した際に、「僕も本が読みたいので、お薦めがあれば教えてください」とじかだんぱんしたことがあるんです。そうしたら段ボールいっぱいに本を贈っていただきました。京セラの創業者・稲盛和夫さんの著書が印象に残っていますね。

福岡ソフトバンクホークス選手

甲斐拓也

かい・たくや

平成4年大分県生まれ。楊志館高校卒業後、育成ドラフト6位で23年福岡ソフトバンクホークス入団。25年支配下登録。29年開幕一軍入り、育成出身捕手として史上初のゴールデングラブ賞、30年育成出身選手初の日本シリーズ最高殊勲選手賞(MVP)受賞。令和5年第5回WBCでも主戦捕手として世界一に貢献。