日本の経済成長を牽引してきた科学技術の停滞は著しく、この現状を悲観する識者も少なくない。しかし本当にそうだろうか。令和元年にリチウムイオン電池の研究と普及でノーベル化学賞に輝いた旭化成名誉フェロー・吉野 彰氏と、電子顕微鏡分野で世界シェア首位を誇る日本電子の会長・栗原権右衛門氏。両氏の熱論からは、立国の礎たる科学技術の活路、目指すべき立志のありようが見えてくる。
上/科学分野ごとの論文数。注目度が高い(Top10%)論文の変化を見ると、化学・材料科学などの減少が著しい・下/日本人がノーベル賞を獲得するまでにはおおむね30年かかることが統計にも見て取れる〈いずれも文部科学省発表資料より〉
旭化成名誉フェロー
吉野 彰
よしの・あきら
昭和23年大阪府生まれ。47年京都大学工学研究科石油化学専攻修了後、旭化成工業(現・旭化成)に入社。60年リチウムイオン電池の基本概念を確立する。17年大阪大学大学院工学研究科にて博士号(工学)取得。29年から現職。令和元年リチウムイオン電池の開発でノーベル化学賞受賞。
日本電子会長
栗原権右衛門
くりはら・ごんえもん
昭和23年茨城県生まれ。46年明治大学商学部卒業後、日本電子入社。取締役メディカル営業本部長、常務取締役、専務取締役を経て平成19年副社長、20年社長。令和元年6月より会長兼最高経営責任者、4年6月より会長兼取締役会議長。