2018年11月号
特集
自己を丹誠する
  • エッセイスト鮫島純子

感謝するところにある
真の喜び

エッセイストの鮫島純子さんは現在96歳。講演や執筆に忙しい毎日だが、その人生の根本には「何事にも感謝できる人間でありたい」という揺るぎのない信念がある。祖父・渋沢栄一や新渡戸稲造、五井昌久など、人生で出逢った先人たちの教えを花開かせ、いまも自己丹誠を続ける鮫島さんの生き方に迫る。

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私が明るく健康でいられる理由

私は今年96歳を迎えました。昭和6年、祖父・渋沢栄一が92歳で他界の折、まだ10歳でした私は「人間はこんなにも長生きできるものなのか」と驚いた記憶がありますが、その祖父の年齢をも超えてしまいました。
 
結婚後、病気らしい病気をしたことのなかった私ですが、最近、心筋梗塞しんきんこうそくで入院生活を経験しました。「ああ、ちょうどいい死に時だな」と思いましたが、手術が成功し、いままたこうして元気に生かしていただいています。「もう少し世の中のお役に立つように」「病気で苦しんでいる人の心に寄り添える思いやりを!」という神様のメッセージかなと思います。
 
90歳を超えても講演をしたり、執筆をしたりしていますせいか、新聞社や雑誌社などからよく健康法について取材を受けます。長年の日課として続けている近くの明治神宮のお詣りや、散歩でお目に掛かった台湾の女医・荘淑旂そうしゅくき先生にご指導いただいた「宇宙体操」についてお伝えしています。
 
宇宙体操とは軽く両手を組み合わせ、手のひらを返して両腕を伸ばし、天を仰ぎながら爪先つまさき立ちで30歩ほど歩くという簡単なものですが、荘先生によれば、がんの予防などにも効果があるのだとか。荘先生からは背中が丸くならないように、できるだけ堅い椅子やソファーを用いるようご指導いただいてきましたが、「姿勢がいい」と皆様から褒めていただくのは、そのおかげなのかもしれません。
 
けれども、いつも明るく健康な心でいられるのは、感謝の心を保つことを自分に言い聞かせ、習慣づけてきたからだと思います。先祖の悟った神霊の守護を信じ、私たち一人残らず与えられた天命(世界平和の実現)がまっとうできるよう守り導いてくださっていることを自覚できれば、これほどの安心感はありませんし、最近、私はそのことを一人でも多くの方にお伝えしたい思いでいっぱいです。
 
ここでは私の歩みを交えながら、いまの心境に至るまでのお話をしてみたいと思います。

エッセイスト

鮫島純子

さめじま・すみこ

大正11年東京生まれ。昭和17年結婚。祖父は渋沢栄一、父は栄一の四男で実業家の渋沢正雄。著書に『なにがあっても、ありがとう』(あさ出版)『毎日が、いきいき、すこやか』(小学館)『祖父・渋沢栄一に学んだこと』(文藝春秋)など。