2018年10月号
特集
人生の法則
  • 志ネットワーク「青年塾」代表上甲 晃

日々発見 日々感動 日々新た

デイリーメッセージ1万号への道

いまから27年前、勤務する松下政経塾の塾生に向けてデイリーメッセージを書き始めた上甲晃氏。以来一日たりとも休むことなく書き続けた日々の記事が、間もなく1万号に到達しようとしている。この積み重ねは上甲晃氏をどう変えたのか。また、そこから学んだ人生の法則とはいかなるものか。

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感動と発見のおすそ分け

27年間、毎日書き続けてきたデイリーメッセージが間もなく1万号を迎える。いま何よりも思うのは健康のありがたさだ。大病をわずらっていたら書きたくても書けなかっただろう。しかし一方で、健康だから継続できたのは間違いないが、続けたから健康になったのではないか、とも思う。
 
私はいま76歳。10月に喜寿きじゅを迎えるが、このよわいで全国を飛び回っている。50代半ばで松下電器を退職し、志ネットワーク社を設立して「青年塾」を始め、60代はほとんど休んだ記憶がないほどよく活動した。しかし、70代になったら60代の時よりもさらに活動している。
 
その原動力となっているのが、デイリーメッセージではないかと思っている。毎日書き続けることで命の根っこから生命力が湧き出てくるように感じるのだ。
 
なぜ1万日近くも続けられたのか。それは読者がいたからである。日記ならば絶対に続いていない。私はいつも「読者に代わって」という気持ちでいる。インタビューをしている時も読者を代表して聞いているつもりだし、原稿を書く時も「早く報告しなければ」という思いで書いている。写真を撮れば「この景色を早く見せて喜んでもらいたい」と思う。読んでくれる人がいることが継続の最大の力になっているのはまぎれもない。
 
実は現在のデイリーメッセージには前段階がある。松下政経塾の塾頭を務めていた時、塾生に向けて出していたものが1,000号ほどある。発端は政経塾の7期生の一人が、ホームページをつくって塾生間のやりとりをパソコンで行いたいと言い出したことだった。いまから30年前の話で、ホームページが出始めた頃である。いいじゃないかと言って始めたのだが、しばらくしたら彼が「誰も見てくれない」と相談に来た。いつ見ても内容が同じなので面白くないというわけである。そこで、「よし、それなら僕が毎日メッセージを書くわ」と言って書くようになった。それがそもそもの始まりだった。
 
ところが、そのうちに塾生たちから「読みたくない」と声が上がった。というのも、その頃のデイリーメッセージは塾生たちへの教育的な意味合いもあり、つい言わずもがなの批判を書いてしまっていたのである。「人を批判するような文章は読みたくない」と言われ、私は大きな挫折感を味わい、1か月ほど書くのをやめた。
 
この時、文章で人をってはいけないということに気がついた。その反省から、人を批判する時は相手に向かって直接伝える、文章では人の悪口を書かないということが私にとっての鉄則となった。同時に、読者に「感動と発見のおすそ分け」をするという気持ちを持って書くようになった。

志ネットワーク「青年塾」代表

上甲 晃

じょうこう・あきら

昭和16年大阪市生まれ。40年京都大学卒業と同時に、松下電器産業(現・パナソニック)入社。広報、電子レンジ販売などを担当し、56年松下政経塾に出向。理事・塾頭、常務理事・副塾長を歴任。平成8年松下電器産業を退職、志ネットワーク社を設立。翌年、青年塾を創設。著書に『志のみ持参』『志を教える』『志を継ぐ』(いずれも致知出版社)など多数。