伊與田覺氏は安岡正篤(せいとく)師の弟子として、生涯を自己修養と聖賢の学の普及に捧げられ、101歳の人生を全うされた方である。その伊與田氏がよく口にされた言葉がある。
「西洋の老いは悲惨さがつきまとうが、東洋の老いは人間完成に向けた熟成期なのである。年を取るほど立派になり、息を引き取る時にもっとも完熟した人格を備える。そういう人生でありたい」
伊與田氏にとっての〝人生の大事〟を示した言葉である。
本号で作家の五木寛之氏と禅僧の青山俊董氏にご対談いただいた。共に90歳を超え、なお人生の高峰を歩まれるお二人だけに、味わい深いものになった。今回の対談にその話は出なかったが、以前、青山俊董氏から仏教には善知識という言葉があり、人間には3つの善知識が必要である、と伺ったことがある。