2023年2月号
特集
積善せきぜんいえ余慶よけいあり
インタビュー③
  • 扇町公園炊き出しの会代表石黒大圓

人は皆善きことを
行うためにこの世に
生まれてくる

大阪の地で20年以上にわたってホームレス支援に携わってきた石黒大圓氏。その原点には愛する妻子との辛い別れ、不思議なご縁の導きがあったという。人生の山坂を乗り越え、自らの天命を見出した石黒氏に、これまでの壮絶な歩みと、善きことを積み重ね、幸せに近づく要諦を語っていただいた。

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    20年以上ホームレス支援に

    ——石黒さんは大阪を中心に、20年以上にわたりホームレス支援に向き合ってきたそうですね。

    約20年前に釜ヶ崎かまがさきで行われていたき出しに参加したことをきっかけに、自営業のかたわらホームレス支援にたずさわるようになりましてね。さらにそこで知り合った方の紹介で寝袋配りの団体を知り、後には全国からカンパを募って個人でもやるようになりました。
    最初の頃は年間1,000個くらい寝袋を配って回っていたのですが、ホームレス自立支援法ができて、生活保護が容易に受けられるようになり、だんだんホームレスの数も減ってきまして、最近は300ほど手配し、今年(2022年)は実際に配るのは100にも満たないでしょうか。1部は他の支援団体に譲っています。まあ、路上に寝る人が減って、いつかは私たちの支援活動がなくなる。それが一番いいことなんですよ。
    あとは、「扇町おうぎまち公園炊き出しの会」代表として、毎週月曜日の夜8時から扇町公園東南角の階段でのおにぎりの炊き出し、着るものや日用品の提供も行っています。

    ——食べるものだけでなく、日用品も。ホームレスの方も喜ばれるのではないですか。

    冬の寒い日に、寝るところがなくて夜中歩き回っている方もいらっしゃるんですよ。それで寝袋を渡したら、「有り難い」「これでやっと寝れるわー!」と、私に手を合わせてくれたり、土下座して喜んでくれる人もいました。そうした感動体験があるから、ホームレス支援が続けられるんです。

    扇町公園炊き出しの会代表

    石黒大圓

    いしぐろ・だいえん

    昭和22年奈良県生まれ。大阪で育ち、45年大学卒業、家業のセーター卸問屋を継ぐ。平成元年に次男を、9年に妻を失う。11年「オヤジ狩り」に遭う。様々な悲しみと苦難を経て、13年釜ヶ崎の炊き出し活動に参加したことをきっかけにホームレス支援に携わる。現在は「扇町公園炊き出しの会」代表を務める。著書に『妻子の死からホームレス支援へ』(アートヴィレッジ/アマゾンなどネット注文か書店取り寄せのみ)がある。