当日は快晴に恵まれ、北海道から沖縄まで全国の読者が、新春の学びを共にせんと遠路をものともせず参集されました。まだ薄暗い早朝からお待ちの方も複数あり、昼の開場前には長蛇の列ができました。会冒頭、映像で『致知』46年の歩みを振り返り、京セラ創業者·稲盛和夫氏をはじめ数多の先達のメッセージに会場は高揚感に包まれました。
茶道裏千家第十五代·前家元・千 玄室氏
「日本をもう一度、お茶をいただく時のような思いやりの心に溢れた、素晴らしい人間性を高めた国にしていかなければならない」
【演題】生きる力
第1講は、御年102を迎える千玄室氏がご登壇。昨年の天災の犠牲者に哀悼を表しつつ、日本の秩序の乱れの根本に、挨拶をはじめ先人が重んじてきた"礼"の喪失があると指摘されました。記紀神話や『万葉集』和歌の朗誦を実演して我が国の源流を示すと共に、80年前に特攻で散華した戦友の思いを代弁するように、茶道の「一盌を勧め合う心」、思いやりを取り戻す必要を訴えられました。身振り手振りを交えて60分直立での講話が終わると、多くの読者が立ち上がり、惜しみない拍手でその背中を見送りました。
北海道日本ハムファイターズチーフ・ベースボール・オフィサー・栗山英樹氏
「一人ひとりが自分のことはさておき、誰かのためにやるべきことをやり尽くした時、ちょっとだけ神様が応援してくれる」
【演題】WBC世界一を通じて伝えたいこと
第2講は、一昨年(2023年)のWBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹氏。まず、数日前に円覚寺·横田南嶺老師の下で参禅したとの報告があり、修養家の一面が垣間見えました。同大会で氏が心を砕いたのは選手の心にどう火を灯し、神様が味方するほどの努力をするか。合宿初日に全選手に直筆の手紙を贈るなど誠の限りを尽くし、控え選手やコーチまで全員が「俺がやらねば誰がやる」と勝利に向かうチームをつくったプロセスを解説。監督として何度も壁に突き当たり、『致知』での学びを糧に突破してこられた軌跡に胸が熱くなりました。
締め括りとなる第3講は弊社社長・藤尾秀昭が務めました。お二人の貴重な体験談を受けて、その生き方の共通点は「学び続ける人」であると総括しました。「2025年、日本は再び甦る兆しを見せるであろう」──森信三師は晩年、こう言い遺されました。かつて日本を訪れた海外の公使たちが称賛した美質をいかに取り戻すか。闇バイトなど非道な犯罪に容易く手を染める若者が増える一方で、まさに国の禎祥といえる、人間学に触れて目覚めた若者世代4名の発表があり、大きな感動が沸き起こりました。「真の活学は人間の相を変え、運命を変える」との安岡正篤師の言葉を踏まえ、青少年への人間学教育が急務であること。正しい勤労観、仕事観を伝承していくことの大切さを熱を込めて語りました。最後に、弊社社員による「萬燈行」の朗唱でその思いを共有して閉講しました。
【第12回『心に響く小さな5つの物語』読書感想文コンクール】
弊社社員による
渾身の「萬燈行」朗唱