2026年7月号
特集
続けてこそ道
インタビュー①
  • 下掛宝生流十三世宗家宝生欣哉

能楽修業に
終わりなし

ワキ方下掛宝生流十三世宗家として、600年以上続く能楽の歴史と伝統を守り、次世代に継承している宝生欣哉氏。2023年には、親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された。能楽界を支える氏に、「名人」と謳われた先代・宝生閑師との修業の日々を交え、体験から掴んだ成長していく要諦、一道を極めていく心構えを伺った。

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    下掛宝生流十三世宗家

    宝生欣哉

    ほうしょう・きんや

    昭和42年東京都生まれ。幼い頃から祖父・弥一師、父・閑師に師事。8歳で『猩々乱(しょうじょうみだれ)』で初舞台。25歳で『道成寺』を披く。海外公演にも多数参加。平成12年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。28年下掛宝生流13世宗家を継承。令和5年親子三世代、能楽界最年少で重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。

    自分はまだまだ能楽の道に終わりなし

    ──宝生さんは、しもがかりほうしょうりゅう能楽師(ワキ方)として、2023年に56歳の若さで重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されました。祖父・いち師、父・かん師に続く三世代、さらに能楽界最年少での認定だと伺っています。

    他の流儀も含めて、素晴らしい先生方、先輩方はたくさんいらっしゃいますから、「まさか自分が」と本当に驚きました。仲のいい能楽師からも、「おまえが認定されるとは思わなかった」と言われましたが(笑)、一番驚いているのは自分だよと。なぜ私が選ばれたのか、いまもまったく分かりません。

    ──先代方も宝生さんの活躍を喜ばれているのではないですか。

    喜んでくれているとは思いますけれども、生きていれば、きっと「(人間国宝認定は)まだ早い!」と言ったでしょうね。特に2016年に亡くなった父と比べれば、自分はまだまだです。追いつくことさえできていません。

    ──先代の芸にはまだまだ及ばないと。いまはどのような心境で舞台に向き合っておられますか。

    父の亡き後、下掛宝生流家元を継承した時もそうでしたが、舞台に立つ上で何か変化があったということはありません。むしろ、そうでないとだめだと思います。どんな立場になっても、流儀を代表して舞台に立つ以上は、自分に与えられた役をこれまで通りしっかり勤める、ただそれだけです。
    ただ、「三代目が家をつぶす」と言われるように、私の代で下掛宝生流を潰すわけにはいかないという思いは改めて強くしています。