2018年1月号
特集
仕事と人生
対談
  • 日本電鍍工業社長(左)伊藤麻美
  • ダイヤ精機社長(右)諏訪貴子

かくして危機を
乗り越えてきた

人生には3つの坂があるという。上り坂、下り坂、まさか——。ここに人生のまさかを乗り越えてきた二人の女性経営者がいる。ともに創業者である父親を突然亡くし、32歳にして倒産の危機にあった会社を引き継ぎ、見事に再建を果たした。日本電鍍工業社長の伊藤麻美さんとダイヤ精機社長の諏訪貴子さんが語り合う体験的「仕事と人生」論。

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NHKでドラマ化

伊藤 諏訪さんとは政府の委員会でご一緒させていただいたことがありますが、深くお話しする機会はなかったので、きょうはとても楽しみにしていました。

諏訪 私もです。伊藤さんとは年齢も近くて、お互い32歳の時に突然父の会社の社長を引き継いだという点で、似ているところがありますよね。だから、結構伊藤さんと間違われるんです(笑)。

伊藤 今度諏訪さんの話がドラマ化されるって聞きました。

諏訪 そうなんです。2013年に出版した『町工場の娘』が原作となって、NHKの金曜夜10時の枠で「マチ工場のオンナ」というドラマが11月24日から全7回で放映されます。
たちひろしさんと内山理名さんが私たち親子の役を演じてくださっていて、主題歌は松田聖子さんがストーリーに合わせて作詞作曲を手掛けてくださったんですよ。

伊藤 へえ、すごい。

諏訪 会社名が「ダリア精機」で、最初に競馬の話が出てくるんですけど、馬の名前が「スワダイヤモンド」(笑)。

伊藤 面白いですね(笑)。

諏訪 伊藤さんの会社は違いますけど、まだやっぱり中小企業って景気がいいというところまで行ってないので、このドラマが少しでも経営者の方のモチベーションやヒントになればと思っています。
高度経済成長の後期に創業された経営者がいまバトンタッチを迎える時期になっていて、これからが中小企業の事業継承のピークに当たるんですよ。伊藤さんもそうですけど、私は人よりも早く事業継承をして、何をしたらいいのか全く分からない中、何とか赤字の会社を立て直してきましたから、これまで自分が培ってきた経営手法をすべて公開しようと。
新聞や雑誌の取材を受けたり、本を書いたり、Facebookで発信したり、一番力を入れている講演活動は全国各地で年間100回くらい。

伊藤 ということは、3日に1回ほどのペース。

諏訪 なので、どこに行くのも全部日帰りできるようにしています。で、朝は必ず会社に行くと。うちは自動車や機械の部品を測定するゲージという製品を主につくっていて、年商3億円、社員数34名のすごく小さな町工場なんですけど、本気で中小企業の活性化を考えて日々活動しています。
それには、中小企業の活性化に熱心だった父が64歳にして志半ばでってしまったので、その志を引き継がなきゃいけないという思いもありますね。

日本電鍍工業社長

伊藤麻美

いとう・まみ

昭和42年東京都生まれ。平成2年上智大学外国語学部卒業。FMラジオのディスクジョッキーとして活躍後、10年に渡米し、宝石の鑑定士・鑑別士の資格を取得。12年父親が創業した日本電鍍工業社長に就任。