「この道より我を生かす道なし この道を歩く」──作家・武者小路実篤が色紙などによく書いた言葉である。35歳の時に始まり90歳で鬼籍に入るまで繰り返し書いている。作家として生きる以外に自分の道はない、この道をひたすら深めていくだけだ、という思いを抱き続けたのだろう。
道は異なっても、一道を歩んだ人は皆、同じ感慨を抱いているのではないか。昭和53年の創刊以来、本号で46周年を迎える本誌もまた、同じ思いを持つものである。
「こちらに同じ波長の電波を持ち合わせていなければ、良き師、良き友との出会いはない」とは、本号にもご登場いただいている高僧・青山俊董さんから教わった言葉だが、「仕事にも人生にも真剣に生きている人の心の糧となる」という創刊理念を貫いてきた『致知』の電波波長が、その道の大家と言われるたくさんの人たちの電波波長と同調し、ご縁をいただくことになったのだと確信している。これは本誌にとって何よりの宝である。
本誌が人間学誌として成長する上で、忘れてはならない4人の恩人がいる。安岡正篤、森信三、平澤興、坂村真民の4師である。それぞれに「この道」を歩み、深められた人たちである。