2018年9月号
特集
内発力
インタビュー④
  • 熊本県宇城市教育長、大津高等学校サッカー部総監督平岡和徳

本気のオーラが
選手たちを変えた

熊本の一県立高校が48人のJリーガーを輩出していることをご存じだろうか。無名だった大津高等学校をサッカー強豪校に育て上げたのが、現在総監督で宇城市教育長を務める平岡和徳氏である。無気力だった選手たちが本気を出すことで一流選手に生まれ変わる軌跡は、内発力の重要性を私たちに教えてくれる。

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艱難を糧に創造的復興

——熊本県立大津高校といえば、高校サッカー界を代表する強豪ですが、平岡先生は無名だった大津高校を全国大会の常連校に育てられた立役者ですね。 

大津高校には平成5年から24年間、教師として勤務しながらサッカー部の指導に当たってきました。前任の熊本商業高校時代を含めると全国大会優勝が1回、準優勝3回。九州大会では10回、県大会では66回の優勝を経験してきました。教え子には48名のJリーガーがいて、今年のW杯メンバーに選ばれた植田直通なおみち(鹿島アントラーズ→ベルギー)もその一人なんです。

——平岡先生は昨年(2017年)、熊本県宇城うき市の教育長という要職に就かれました。

ええ。大津高校サッカー部はいまも総監督という立場ですが、まずは何よりも教育長としての仕事をまっとうしなくてはいけません。宇城市には約5,000人の児童生徒、約500人の教職員がいますから、教育全体を俯瞰ふかんしながら「夢を持ち、24時間をデザインし、未来をプロデュースできる児童生徒の育成」をいかに推進していくかが大きな課題です。
特に熊本地方は一昨年(2016)、未曾有みぞうの大地震に襲われました。一人ひとりに様々な艱難かんなんが襲い、教育施設もダメージを受けましたが、大切なのは運命を嘆いたり、人をとがめたりすることではなく、艱難こそが創造的復興や子供たちを輝かせるための糧だと僕は思っているんです。

——厳しい状況をむしろチャンスと捉えられている。

子供たちの未来を輝かせるには、教師を含めた大人が、自分は子供たちの未来に触れているという自覚を持って、本気のオーラを出さなくてはいけません。
僕自身の長年の経験からも言えることですが、子供たちは大人の本気度がオーラで分かります。「あの先生の言うことなら」という目に見えないオーラを感じてこそ、子供たちは動くんです。そういう本気の大人が地域社会に何人いるかで子供たちの未来も変わると思っています。

熊本県宇城市教育長、大津高等学校サッカー部総監督

平岡和徳

ひらおか・かずのり

昭和40年熊本県生まれ。帝京高校、筑波大学時代には主将として全国大会で数々の好成績を残す。大学卒業後、地元・熊本で県立高校教師となり、熊本商業高等学校、大津高等学校をサッカーの強豪校に育てる。巻誠一郎など48名のJリーガーを育成。平成27年から日本サッカー協会技術委員会に籍を置き、日本オリンピック委員会強化スタッフとなる。29年4月宇城市教育長に就任。