2018年5月号
特集
利他りたに生きる
  • アイテラス社長今野華都子

日本人の心の故郷
『古事記』を読む

この度、『はじめて読む人の「古事記」』を上梓された今野華都子さんは、全国に30を数える古事記塾を主宰するなど、いまも精力的に『古事記』を広める活動を続けている。そこで本欄では、『古事記』に寄せる深い思いを語っていただくとともに、日本人のルーツとなる神話の世界を、利他に生きた大国主神の物語を中心に紐解いていただいた。

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空白の73年

私の手許てもとに1冊の古びた教科書があります。『尋常小学國史(上巻)』という、戦前の小学校で使われていた歴史の教科書です。
 
冒頭には天照大御神あまてらすおおみかみのお話が書かれていることから、当時の子供たちが『古事記』『日本書紀』に記された神話の世界について、学校で習っていたことが分かります。
 
それに加えて当時の子供たちは修身の授業を通じて、いまでいう道徳も習っていたこともあるでしょう。「自分はどう生きればよいのか」ということに対する判断基準を、しっかりと確立していたように思います。自分の生き方に対する迷いのようなものが、なかったと言えるかもしれません。
 
ところが、終戦を境に状況は大きく変わりました。GHQの占領政策によって、そういった教育が禁止されてしまったのです。以来、修身の授業が姿を消すとともに、歴史の授業で神話の世界が教えられることもなくなって、既に73年が経とうとしています。そしてその間、日本人の精神基盤となっていた部分が、大きく揺らいでいったのでした。
 
2011年3月11日に起こった東日本大震災は日本中を不安に陥れましたが、その中にあって日本人が取った行動は実に見事でした。危機的状況下でも礼儀と忍耐を忘れない日本人の振る舞いは、海外から大きな賞賛を受けたのです。なぜそのような高い精神性を発揮できたのかといえば、やはり祖先から受け継がれてきたものだと言えるでしょう。
 
しかし、だからといってその伝承が今後も行われていくかとなると、当然疑問が残ります。なぜなら先ほど述べたように、私たち日本人のルーツである神話の世界が、現在の学校教育においてすっぽりと抜け落ちたままになっているからに他なりません。
 
この国には現在、第125代となる天皇陛下がいらっしゃいますが、そこからずっとさかのぼって神話の世界を学ぶことは、そのまま私たちのルーツを知ることにつながります。日本という国がどんな思いで創られたのか、どんな人物が関わってきたのかを知れば、おのずと日本人の物の考え方や日本の国柄がどう形づくられてきたのかが明らかになってくるのです。
 
いまこそ、そういったことを形あるものとして、広く伝えていくことが必要ではないだろうか。そう思うようになってからはたと気づいたのは、いまの子供たちが読めるような『古事記』に関する本がないことでした。
 
そこで、子供たちにも親しみを持って読んでもらえるような入門書をつくりたいという思いからこの度上梓じょうししたのが、初代神武じんむ天皇に至るまでの神話の物語を現代語で解釈した、『はじめて読む人の「古事記」』なのです。

アイテラス社長

今野華都子

こんの・かつこ

昭和28年宮城県生まれ。平成10年エステティックサロンを開業。16年第1回LPGインターナショナルコンテストフェイシャル部門にて日本最優秀グランプリ、また、世界110か国の中で最優秀グランプリを受賞。タラサ志摩ホテル&リゾート、カルナ フィットネス&スパの社長を歴任。最新刊に『はじめて読む人の「古事記」』(致知出版社)。