2024年8月号
特集
さらに前進
インタビュー
  • メダデ教会牧師西田好子

嫌われても、拒否
されても、手を差し
伸べずにはおれない

日雇い労働者や野宿生活者が多く住む大阪市西成区のあいりん地区。商店街の路地裏にあるメダデ教会の西田好子さんは型破りの牧師として有名だ。野宿生活者や薬物中毒者、前科のある人たちに次々に声を掛けて伝道。信仰を通して彼らの人生や生活を立て直してきた。教師から転身した女性牧師を駆り立てるものは何か。人々の救済のためにきょうも前進を続ける西田さんにお話を伺う。

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人間、食べ物だけでは生きていくことはできない

──西田牧師が取り上げられたNHKの1時間番組を拝見しました。様々な事情を抱えながら教会に通う信徒さんたちと、全力で向き合い、生きる勇気や希望を与えられる姿に圧倒されました。

私の人生を語らせてもらったんやけど、あの番組、すごく評判がいいみたいでね。何度も再放送されています。番組を見た途端、西にしなりの私の教会にパーッと飛んできて感動を伝えてくれる人が何人もいてはりました。ほとんどテレビ見いへんけど、私も放送を見た時は気がついたら泣いていたね。

──ご自身が泣かれていた。

説教するのでも自分が感動しないような説教したって意味がない。自分の心が動かされるから相手にも伝わるんです。誰かの言葉を借りてしゃべっても、相手の心が動きますか。そうでしょう? ギリシア人の心を捉えるにはギリシア人になれと『聖書』に書いてあるけど、西成のおっさんの心を捉えようと思ったら西成のおっさんにならなあかんのです。その人のことを知らなかったら伝道はできませんよ。
だから、私はいつも信徒のおっさんたちと一緒。牧師が宝石ジャラジャラで金ピカ衣装でええもん食うていたら、誰がついてきますか? 私が毎日口にするのは24時間営業の激安スーパーの特売品と近くの喫茶店でただでもらうパンの耳。家は冷房も暖房も入れない。そうやって貯めたお金は教会の運営費にてています。
半額、割引商品を買うには早朝が狙い目でね。朝4時頃、激安スーパーに行くと、信徒が皆集まってきよる。買い出しに行った後はミーティングや。一人ひとりのその時の状況と一日のスケジュールを確認する。毎日会うていたら、その子の様子が分かります。いくら「煙草たばこ吸うてへん」言うても吸うたと分かる。毎日会っていることで、同じ家族という絆も深まってくるんです。

──何人の信徒さんがいらっしゃるのですか。

22人。年齢で言うたら86歳から37歳かな。路上生活や放浪、刑務所暮らしなどを経験したワケありの信徒ばかりです。酒やギャンブル、薬物におぼれていた子たちもおる。そやけど、そんな過去を断ち切って新しい人間になってもらわな教会に来る意味ないでしょ。それで教会は酒も煙草もギャンブルも禁止です。
もちろん、禁欲的な生活についてこれんで去っていく子もおるけど、一方で少しずつ仕事を始める子もいれば、体の不自由な仲間の車いすを押したり、寝たきりの仲間の食事の介助ができるようになる子もいる。そうやって輝く姿を見ることは私の一番の喜びですね。
日曜日になると、この教会に皆集まって賛美歌を歌って神様に礼拝を捧げます。私の説教は厳しいですよ。心が乱れていたら鬼になってしかり飛ばすし、泣くこともある。かと思うとめっちゃ面白い冗談も言う。吉本顔負けや(笑)。

──牧師として、信徒さんの心と生活の両面の支援を続けられているのですね。

教会に来ると皆、ワイワイ言うて喋っています。だけど、この子たちは昔はそういう状態ではなかった。朝一人目覚めて仕事をして酒飲んで煙草吸うてギャンブルしてそれで一日が終わり。帰っても話す相手がいない。家族から皆縁を切られている。何の夢も希望もなく明日死んでもいいと思って暮らしている。それが人間としてどんだけ悲しいことか……。
この地域では炊き出しも行われています。着る服ももらえます。おっさんたちがそれで喜んでいるようにも見える。だけど、そうじゃないんです。心が死んどるんですよ。食べ物を与えられるだけでは人間、生きていかれへん。そういうおっさんたちに「人生、幸せやったな」と思って最後は神様のもとに行ってもらいたい。それが私の願いです。それで私は路上に寝ている一人ひとりに「うちの教会に来いへんか」と声を掛けながら、きょうまで神様の愛を伝えてきたんです。

メダデ教会牧師

西田好子

にしだ・よしこ

昭和25年大阪府生まれ。龍谷大学卒業後、滋賀県の小学校教師となる。2児を連れて離婚後、大阪府下の小・中・養護学校で講師として勤務。平成13年関西学院大学神学部3年編入。15年日本基督教団教師となる。24年大阪市西成区にメダデ教会を設立。野外生活者や前科のある人、身寄りのない人々らの救済に当たる。