2024年8月号
特集
さらに前進
インタビュー
  • 名城大学女子駅伝部監督米田勝朗

自主性重視の指導で
選手の可能性を開く

個性の異なる複数のランナーが襷を繋いで勝敗を競う駅伝。高い総合力が求められるこの競技で無類の強さを発揮し、全日本大学女子駅伝対校選手権大会で史上初の7連覇を成し遂げたのが名城大学女子駅伝部である。ゼロからチームを育ててきた米田勝朗氏は、初めて日本一を実現した後、その成功体験と決別して常勝軍団をつくり上げてきたという。勝ち続けるために大切なことは何か。体験を通じて掴んだ心得に迫った。

この記事は約10分でお読みいただけます

自己管理できない選手は通用しない

──米田監督率いる名城大学女子駅伝部は昨年(2023年)、全日本大学女子駅伝で7連覇、富士山女子駅伝で6連覇と、いずれも史上初の快挙を見事に成し遂げられましたね。

ありがとうございます。勝つ度に連覇への期待も増していきますから、レースの後は喜びよりもあん感のほうが大きいですね。あぁ、終わったと(笑)。

──他チームを寄せつけない強さの秘密は何でしょうか。

使いたい選手を、毎年きちんと使えたということですね。
駅伝は区間によって距離も違いますし、高低差もあります。そして選手の中にも、へいたんな道は強いけど上りは弱いとか、いろんなタイプの子がいる。うちのチームにはいま約20人の部員がいますけど、トータルで結果を出すためには、一人ひとりの特長をうまく引き出してベストなオーダーを組むことが大事です。特に軸になる選手が走れなくなるとチームの成績に大きく左右しますから、とにかくをせずに、狙った試合にしっかりピークを合わせていくことがポイントですね。
その際に私の30年間の指導経験を元に導いていく部分もありますが、うちの部では私が全部をコントロールするのではなく、学生たち一人ひとりが自分で自分の体をコントロールすることを重視しているんです。

──監督が導くだけでなく、選手自身の自己管理も大事なのですね。

難しいですけれどもね。とにかく繰り返し言い続けて理解させるしかありません。なぜ体を絞らなくてはならないのか、なぜいろんな誘惑に負けないように気持ちをコントロールしなくてはならないのか。自分たちがやっている競技を、その楽しさ、厳しさも含めていかに深く理解させるかが大事だと思います。
もちろん女子大生なので、いろんな誘惑はあると思うんです。私が若い頃は、「遊びに行くな」と言っていました。誘惑に負けるなら遊ばないほうがいいと。しかしいまは全部任せています。ただ、自分がアスリートだということは常に意識していなさいと。
正直、いまは選手ごとにすごく差があります。自己管理のできる子はどんどん伸びていくし、できない子はまったく走れない。以前は厳しい管理指導をしていたので、その幅は狭かったんですけどね。

──それでも自主性が大事だと。

それは私の本業が駅伝監督ではなく、大学教授であることも大きいですね。選手である前に学生として、4年間どう育てていくかを考えて彼女たちと向き合いたいんです。もちろん卒業後も競技を続けてオリンピックや世界選手権を目指すなら、なおさら自分で自分を管理できなければ通用しませんからね。
私は1996年に部員2名からこの駅伝部をスタートした時、15年以内に絶対日本一になると目標を掲げ、11年目に全国優勝することができました。けれどもその頃は「名城大の子は卒業したら走れなくなる」とよく言われていました。4年間ただ言われた通りにやっていただけだからです。
ですから私は管理型の指導をやめて、自分で考えて自分で走れるアスリートを育てようと方向転換したわけです。
去年の大会で印象的だったのは、アンカーの谷本ななのペースが思ったより遅いので心配していたら、わざとペースを落として後ろの選手の動きを見たそうなんです。そこで差が縮まらなかったので、大丈夫だと思ってスパートをかけたのだと。結局1分近く差を広げて優勝を決めたんですが、そういう選手がいることは、チームにとってすごく大きいと思いますね。

名城大学女子駅伝部監督

米田勝朗

よねだ・かつろう

昭和43年宮崎県生まれ。日本体育大学卒業、同大大学院体育学研究科修士課程修了。弘前大学大学院医学研究科博士課程(医学)修了。平成6年名城大学に赴任。助手、講師、助教授、准教授を経て教授に就任。その傍ら女子駅伝部を立ち上げ、11年の全日本大学女子駅伝対校選手権大会で初入賞、17年には東海地方の大学では初の優勝を飾る。令和5年、全日本大学女子駅伝対校選手権大会7連覇という前人未到の記録を打ち立てる。名城大学法学部教授。医学博士。