2016年4月号
特集
夷険一節
インタビュー①
  • NPOスチューデント・サポート・フェイス代表理事谷口仁史

どんな境遇の子も
見捨てない

引きこもりや不登校、家庭内暴力、虐待、非行、自殺未遂など、心に闇を抱える子どもたちに寄り添い続ける1人の若きリーダーがいる。NPOスチューデント・サポート・フェイス代表理事の谷口仁史氏、39歳。アウトリーチと呼ばれる訪問支援の達人だ。幾多の修羅場を乗り越え、7,000人以上の子どもたちを社会復帰へと導いてきたその道のりを伺った。

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9割以上の子どもが社会復帰していく

──谷口さんが代表理事を務めるNPOスチューデント・サポート・フェイス(略称SSF)は、心に闇を抱える子どもたちをこれまで7,000人以上も社会復帰へと導いてこられたそうですね。

SSFは子どもの健全育成や自立支援を目的に、平成15年7月に設立し、同年10月にNPO法人化されました。以来、引きこもりや不登校、家庭内暴力、虐待、非行、自殺未遂など、NPO本体事業のみで延べ5万5,000件もの相談をいただき、我われはそのうち1万3,000件に対して訪問支援を展開してきました。
実にその9割以上に学校復帰や脱引きこもり、進学、就職といった改善が見られているんです。

──命名の由来は何ですか?

スチューデント・サポートというのは、長期欠席した子どもが学校復帰する際、個別で学習指導などを行い、復帰を手助けする海外の取り組みの名称に由来しています。それに私の好きな言葉、フェイス(信念)を加えました。
設立時、私は大学を卒業したばかりで26歳でしたから、高校時代の校長先生に理事長になっていただき、母校の佐賀大学の教授を中心に理事会を構成し、私のような若い人間が実動部隊で働く。そういう形でスタートしました。現在、有給職員は72名、ボランティアの登録会員は235名となっています。
行政との協働も進み、「子ども・若者育成支援推進法」という法律で定められている3つの中核機関のうち、佐賀県の「総合相談窓口」と県内で唯一指定されている「指定支援機関」の2つについて、我われが信任を受けています。
もう一つが、若年無業者(ニート)の状態にある若者の職業的自立を支援する「地域若者サポートステーション事業」。これも平成18年のスタート時から厚労省より委託を受け、佐賀県のサポステ事業を手掛けているんです。

──行政機関から絶大な信頼を寄せられているのですね。

佐賀県における若年無業者に関わる自立支援は、入り口から出口まで我われが一貫して対応していこうと。直近5年間を見ても、サポステの相談件数は年間1万件を超えています。これは全国2位の実績で、全国平均の3.6倍に当たる数字なんです。
それらの実績を評価していただき、平成22年度には「子ども若者育成・子育て支援功労者」として、内閣総理大臣表彰を受賞しました。

NPOスチューデント・サポート・フェイス代表理事

谷口仁史

たにぐち・ひとし

昭和51年佐賀県生まれ。在学中からボランティアで不登校、ニートなどの状態にある子ども・若者へのアウトリーチ(訪問支援)に取り組む。平成15年佐賀大学文化教育学部卒業後、NPOスチューデント・サポート・フェイス設立、専務理事に就任。18年より現職。これまで委託事業を含む約16万6,000件の相談活動、約1万4,000件のアウトリーチに携わってきた。その他、内閣府の「子ども・若者育成支援推進点検・評価会議」をはじめ、数多くの政府系委員も務める。