2017年6月号
特集
寧静致知
一人称
  • 国際ビジネスブレイン社長新 将命

勝ち残る企業は
かくして創られる

企業の盛衰はトップで決まるといわれる。ジョンソン・エンド・ジョンソンやフィリップスなど、数々のグローバル・エクセレント・カンパニーで経営を担ってきた新 将命氏に、勝ち残る企業の創り方、トップリーダーに求められる条件について伺った。

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半世紀近く企業経営に携わって気づいたこと

勝ち残る企業には驚くほど共通点がある──。

これは半世紀近く経営の第一線に身を置いてきた私の実感です。1959年に早稲田大学を卒業し、シェル石油(現・昭和シェル石油)に入社して以来、日本コカ・コーラやジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスなど、日米英蘭の4か国、6社のグローバル・エクセレント・カンパニーに勤め、3社で社長職、1社で副社長職を経験してきました。

世界各国の様々な分野の企業の経営に携わる中で、勝ち残る企業には驚くほど共通点、つまり原理原則があることに気づいたのです。

評論家はよく、アメリカの経営者は社員を道具のように扱って、すぐ首にしてしまう、日本の経営者は社員を長期的な資産として雇用すると言っていますが、日本の企業であれアメリカの企業であれ、勝ち残る企業には普遍性があり、国籍国境は関係ありません。

業種業界や企業規模においても然りです。物づくりのメーカーであれサービス業であれ、年商1兆円の大企業であれ10億円の中小企業であれ、長寿企業の基本は一緒だと思います。また、ピーター・ドラッカーの『現代の経営』には、「経営とは顧客の創造である。顧客の創造はマーケティングとイノベーションである」と書かれていますが、これは半世紀以上の時を経たいまも当てはまる教えでしょう。

ゆえに、経営の原理原則は国籍国境、業種業界、企業規模、時代という4つの要素を超越して効力を発揮するものなのです。

一方、原理原則の対極にあるものとは何でしょうか。それは我流、自己流です。我流、自己流も確かに大事ですが、経営者がそれだけにしがみつき、原理原則を学ばず好き勝手にやっていると、いずれ壁にぶち当たる。原理原則のないでたらめ経営では会社は長続きしません。

経営の神様・松下幸之助さんに、こういう言葉があります。

「成功している会社はなぜ成功しているのか。成功するようにやっているからだ。失敗している会社はなぜ失敗しているのか。失敗するようにやっているからだ」

我流、自己流を大事にしながらも原理原則を学び、実行に移す。そうすれば壁をぶち破って、会社は前進し、成長できるのです。

国際ビジネスブレイン社長

新 将命

あたらし・まさみ

昭和11年東京生まれ。34年早稲田大学卒業後、シェル石油(現・昭和シェル石油)入社。日本コカ・コーラ勤務を経て、57年ジョンソン・エンド・ジョンソン社長就任。平成2年国際ビジネスブレイン設立、社長就任。これまでグローバル・エクセレント・カンパニー6社のうち3社で社長職、1社で副社長職を務める。長年の経験と実績をベースに国内外でリーダー人財育成に取り組む。著書に『王道経営』(ダイヤモンド社)など多数。