2021年1月号
特集
運命をひらく
インタビュー①
  • トラスコ中山社長中山哲也

人や社会のお役に立ててこそ
事業であり、企業である

機械工具の業界で最後発ながら、東証一部上場企業へと発展を遂げてきたトラスコ中山。社長の中山哲也氏は、有力な同業者のひしめく中、いかなる考え方で同社を導いてきたのか。今日に至る足跡を交え、常識に囚われず、体験の中から培ってきた独自の経営ポリシーをお話しいただいた。

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在庫は多いほうがいい

——御社は機械工具の専門商社として、創業以来大きな成長を実現してこられたそうですね。

サラリーマンだった父が、昭和34年に独立してゼロから立ち上げた会社ですが、おかげさまで平成8年には東証一部上場を果たし、いまでは年商も連結で2,200億円を超えるまでになりました。特別に脚光を浴びたり、急成長が期待されたりするような業界ではないのですが、どんな業界でも一所懸命やれば必ず成長の扉はひらける、ということはいつも言っています。

——いまや業界を代表する会社になられたわけですね。

いえ、当社は業界では最後発の会社でして。同業者には創業300年を超えるところなど、我われが逆立ちしても追いつかないような有力な先輩企業がたくさんあるんですよ。
そういう中で、いかに本業でお役に立つかということを突き詰めていくと、お客様の注文にどれだけ早く、確実に対応できるかというところが我われの勝負のしどころになってくるわけです。しっかり在庫をそろえ、物流を整えることこそが当社の役割と考えて、創業以来ずっと力を注いできました。
例えば、世間では在庫は少なければ少ないほどいいという考え方が主流ですけど、お客様からすれば多いに越したことはない。特に当社のお客様は納期に厳しく、「早く持ってこい」が常ですから(笑)、当社はこれに対応するために現在、即日出荷の可能な商品を40万アイテム以上取り揃えていて、令和5年にはこれを50万アイテムまで拡充する予定です。
50万アイテムと言ってもピンとこないかもしれませんね(笑)。有名なオフィス用品大手でも6万アイテムですから、これがいかに大きな数字かということです。

——想像を絶する品数です。

当社では、工事現場などに使われるカラーコーンの2.1メートルのものとか、長尺の梯子はしごとか、他社があまり置きたがらない希少な商品もしっかり在庫しています。在庫回転率などという、お客様には何の意味もない指標は除外して、代わりにご注文のうちどれだけ在庫から出荷(ヒット)できたか、という「在庫ヒット率」を重視して、現在91・1%を実現しているんです。

トラスコ中山社長

中山哲也

なかやま・てつや

昭和33年大阪府生まれ。56年近畿大学商経学部を卒業し、中山機工(現・トラスコ中山)に入社。59年取締役。常務、専務を経て、平成6年社長に就任。視覚障がい者を支援する公益財団法人中山視覚障害者福祉財団の理事長を務めるなど、社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。