2017年12月号
特集
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  • 大阪桐蔭高等学校硬式野球部監督西谷浩一

チームを
日本一に導くもの

今春のセンバツ甲子園で優勝を果たした名門・大阪桐蔭。チームを率いる西谷浩一監督は監督歴18年、48歳の若さながら、高校野球史上歴代2位タイの甲子園優勝5回の記録を持つ名将である。いかにしてチームを日本一に導いてきたのか、その要諦に迫った。

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夏の甲子園で得た教訓

大阪桐蔭vs履正社。2017年4月1日、春のセンバツ高校野球決勝──。史上初の大阪勢対決となった決勝を制し、我われ大阪桐蔭高校野球部は2度目のセンバツ優勝、春夏通算5度目の日本一に輝きました。

初めてセンバツを制覇したのはいまから5年前、2012年です。この年は夏の甲子園でも優勝し、史上7校目となる春夏連覇を成し遂げました。

高校野球100年の歴史の中で春夏連覇を2回達成した学校はまだないとのこと。そういう考えは全く頭になかったのですが、実際に聞けば、前人未到の記録に挑戦したいと思うのは必然でしょう。

ただ、センバツで圧勝したわけではありませんし、大阪は強豪がひしめき合う激戦区。その上に、大阪大会は全国で唯一シード制が敷かれていないため、初戦でいきなり強豪に当たる可能性もある。そこで8回勝ち続けないと甲子園の切符は手にできません。

ですから、春夏連覇の通過点として大阪大会を捉えていては絶対に勝てない、と子供たちに伝えていました。史上初となる2度目の春夏連覇を目指す気持ちは心の奥底に宿しながらも、まず目の前の大阪大会で勝つことに意識を集中させたのです。

そして、大阪大会を制した時の優勝インタビューで初めて、「いままでどこもやったことのない2度目の春夏連覇に、全員で真正面から挑戦したい」と宣言しました。
夏の甲子園はバッティングの状態が思うように上がらず、厳しい戦いが続きました。そういう中で私が子供たちに繰り返し伝えていたのは、「日本一になるためには、大会中に成長しないといけない」ということです。

甲子園の舞台では実力が足し算ではなく掛け算になるチームと、反対に本来の実力の半分も出せず、足し算どころか引き算や割り算になってしまうチームに分かれます。前者のように大会の中で勝ちながら強くなっていくチームが最終的に優勝するわけですが、その差は何かと言えば、普段からどれだけ本物の練習を積み重ね、窮地で力を発揮できるメンタルを鍛えているかだと思います。

結果として、我われはベスト8入りをかけた仙台育英との試合で残酷的な敗北を喫し、史上初となる2度目の春夏連覇の夢は途絶えてしまいました。監督として子供たちを勝たせてあげられず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

1対0でリードして迎えた9回裏、ツーアウトランナー1、2塁。打者をショートゴロに打ち取ったものの、一塁手の足がベースを離れセーフの判定。直後にサヨナラヒットを打たれてゲームセット。

私自身、ショートゴロになった瞬間、「あっこれでもう勝った」と正直安堵していました。その意味でも、ありきたりなことですが、「最後の最後まで決して気を抜いてはならない。絶対に隙を見せてはならない。アウトをきっちり取って初めて勝ち切ることができる」という教訓を次なる戦いに繋げていかなければと肝に銘じています。

大阪桐蔭高等学校硬式野球部監督

西谷浩一

にしたに・こういち

昭和44年兵庫県生まれ。報徳学園高校、関西大学で野球をプレー。平成5年大阪桐蔭のコーチとなり、10年11月から監督に就任。13年にコーチに戻ったが、14年秋に監督復帰。これまで甲子園出場13回(春7回、夏6回)のうち、優勝5回(春2、夏3)。西岡剛、中村剛也、中田翔、藤浪晋太郎ら、幾多の逸材をプロに輩出している。