2017年8月号
特集
維新する
一人称
  • 分子古生物学者更科 功

生命40億年の
進化に学ぶ

人類はいかにして人類となったのか

最初の生物が地球に誕生したのはいまから約40億年前。以来、生物は絶えざる進化により、様々な環境の変化、逆境を乗り越え現在まで生き残ってきた。その生物の進化の軌跡、そして進化の営みがいまを生きる私たちに教えてくれることを、分子古生物学者である更科 功氏に語っていただいた。

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恐竜や化石が好きで堪らなかった

私が昔の生物、いわゆる「古生物」に興味を持ったのは小学生の時でした。学校の教科書や図鑑などを見て、恐竜や化石が好きで堪らなくなったのです。

大学では物理を専攻し、一度は民間企業のコンピュータ部門に就職したものの、やはり幼い頃からの古生物への思いは断ち難く、30歳で大学に戻りました。以後、分子古生物学を専門に研究や大学での講義を続け、現在に至ります。

分子古生物学という分野を初めて知ったという方もいらっしゃるかと思いますが、ごく簡単に言えば、地層や化石とともにDNA情報やたんぱく質なども活用しながら、昔の生物の生態や進化の過程を明らかにしていく学問です。

特に近年では、DNA鑑定など科学技術の進歩によって、古い化石や地層からだけでなく、いま生きている生物の情報からも、昔の生物のことをかなり復元できるようになっています。例えば、子供がたくさんいれば、容姿が分かっていない親の顔を復元することも理屈上は可能です。

最初の生物が誕生したのは、地球が誕生した6億年後、いまから約40億年前。以来、途方もない年月の中で、生物は進化し続け、進化の道はどんどん枝分かれしていき、たくさんの生物が現れました。そして、その中のたった一本の道が、私たち人類に繋がったのです。そのことを思う時、こうして自分が生きていることの奇跡を思わずにはいられません。

本欄では、分子生物学の最新の成果を踏まえ、生物の誕生や人類の進化の軌跡を辿り、生物の進化の営みが私たちに教えてくれることを考えてみたいと思います。

分子古生物学者

更科 功

さらしな・いさお

昭和36年東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。民間企業勤務を経て大学に戻り、東京大学総合研究博物館研究事業協力者に。著書に『化石の分子生物学』(講談社現代新書)『宇宙からいかにヒトは生まれたか』(新潮新書)などがある。