2018年10月号
特集
人生の法則
インタビュー③
  • 朝の読書推進協議会理事長大塚笑子

読書は人生を変え、
生き抜く力を与えてくれる

いま「朝の読書」を導入している小・中・高校は全国で2万7,000校にのぼるという。そのスタートは1988年に始まった千葉県のある私立女子高校での小さな取り組みからだった。教師として「朝の読書」を推進し、現在、朝の読書推進協議会理事長を務める大塚笑子さんは、どのような思いでこの活動に取り組んでこられたのか。読書の素晴らしさや効用を交えながらお話しいただいた。

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千葉の私立高校の取り組みが全国へ

——小・中・高校での「朝の読書」が全国的な広がりを見せていますが、大塚さんはその取り組みの先駆けだとお聞きしています。

はい。私が千葉県の私立女子高の体育教師だった1988年、この「朝の読書」がスタートし、生徒たちの生活態度は驚くほど変わりました。決して進学校とはいえない地方の一高校で始まった小さな取り組みが30年経った現在、全国2万7,000の学校にまで広まっているわけですから、ある意味、感無量でもありますね。
実は私はそれ以前の10年間、自分独自のクラス活動の一環として読書を取り入れていました。私がまだ30代の頃でしたが、生活態度がよくない生徒が増えていたんです。当然、成績もパッとしません。

ある時、私は2年生の生徒たちに将来の進路を考えさせる目的で履歴書を書かせてみました。ところが、見てみると名前と住所しか書いていない。クラブ活動も資格・検定も趣味も何もなし(笑)。
これは何とかしなくてはいけない、せめて読書くらいは身につけさせようと思って、読書に力を入れるようになりました。手始めに『走れメロス』や『蜘蛛くもの糸』などを読んであげると、大変喜びましてね。そこで私は私費で小説や伝記などいろいろな本を150~160冊ほど取りそろえて教室の書棚に並べ、読書指導をするようになりました。
当時、学校では週1回のロング・ホームルームというものがあって、この時間は何をやろうと自由でした。そこで読み聞かせや黙読をしたところ、驚くことに生徒たちの成績がグングン伸びていったんです。

——読書の効用が現れた?

私語もなくなり、私が「皆さんの集中力はすごい」と褒めると、生徒もまたその気になっちゃう(笑)。同僚の林公はやしひろし先生から「朝の読書」を学校ぐるみでやりたいというお話があったのは、そういう活動を続けていた時でした。

——「朝の読書」は同僚の先生が考えられたのですか。

というよりも、もともとはアメリカで提唱され、大きな成果を挙げていたものなんです。林先生は読書の教育効果を実例を挙げながら紹介したジム・トレリース著『読み聞かせ--この素晴らしい世界』の、特に最終章「『黙読の時間』のすすめ」を読んで大きな衝撃を受けられるんですね。
この本は建国以来の教育危機と言われていたアメリカで、子供たちの真の学力を高めるために、本好きの子供たちを育てることがいかに大事かということや、その導入段階での「読み聞かせ」の素晴らしさが書かれていました。林先生にとっては、一つの学校で全校生徒、全教師が揃って同じ時間に一斉に読むという発想がとても新鮮で、「うちの学校では毎日やろう、それも朝のホームルームだ」とひらめいたといいます。

徹夜でその本を一気に読み終えた先生は、朝一番で学校に行き、「『黙読の時間』のすすめ」を全教師分コピーして配布した上で実行案を作成し、学校運営委員会に提案されたんです。当時の学校は生徒が担任の話を聞かない、授業中に私語が絶えない、教科書がまともに読めないなど問題山積でしたから、これを何とかしたいという強い思いがおありだったのだと思います。

朝の読書推進協議会理事長

大塚笑子

おおつか・えみこ

昭和21年岩手県生まれ。東京女子体育大学卒業後、千葉県の私立高校の体育教師となる。学級活動で取り組んできた読書活動を63年以降、「朝の読書」として全国的に推進。退職後の現在は朝の読書推進協議会理事長として啓発活動に尽力している。