2017年4月号
特集
繁栄の法則
鼎談
  • 陶芸家北川八郎
  • 鎌倉投信社長鎌田恭幸
  • オークス社長佐藤俊之
人間経営学を学ぶ

どうすれば
繁栄の道へ
踏み出せるのか

陶芸家の北川八郎氏は30年前、2度にわたる40日以上の断食をとおして宇宙の叡智に触れたという。氏がそこで与えられた「繁栄の法則」を現実の経営の場で生かし業績を伸ばし続ける鎌倉投信社長の鎌田恭幸氏、オークス社長の佐藤俊之氏とともに、社員が育ち企業が発展する秘訣、人生繁栄の道を語り合っていただいた。

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人間は魂を磨くために生まれてきた

北川 私は鎌田社長も佐藤社長もよく存じ上げていますが、3人で話をするのは初めてですね。

鎌田 それで、きょうは私たちも先生を囲んでお話しできるのを、とても楽しみにしてきました。

北川 鎌田社長と最初に会ったのは何年前でしたか。

鎌田 私が鎌倉投信を立ち上げて5年ほど経った頃ですから3年前です。「満月の会」(北川氏による経営者の勉強会)の世話役でもあるパソナキャリアカンパニー社長の渡辺尚さんのご紹介で、1泊2日の勉強会に参加させていただきました。先生のお話にも瞑想にも大変感銘を受けたのですが、それ以上に、すべてが削ぎ落とされたような、無理無駄のない先生の雰囲気に魅せられたんですね。
その頃は経営が思うように軌道に乗らずに悩むことも多く、「人は何のために生きるのか」「仕事とは何か」という本質的なテーマを探究していた時期でしたので、先生に出会えたのは実にタイムリーだったと思っています。

北川 その研修会には社会的に知られた社長さんが何人も来ておられましたね。その中で鎌田さんはひと際透明感があって、一般の経営者とはまた違った目を持っていらっしゃいました。
私はいつもと同じように、「経営者は自分の利益だけを目指すのではなく、経営活動をとおして人を救うことに目覚めることです。そうすれば自分が一番生き甲斐を感じる人となる」といった少し難しいスピリチュアルな話から入っていったんですが、鎌田さんの心に染みとおっていったと聞いて、とても嬉しく思いました。

鎌田 悩んでいた分、吸収するものも大きかったのだと思います。
先生、覚えておいででしょうか? 研修の食事会の後に「人は何のために生きるんですか。魂を磨くことそのものが生きる目的ですか」という質問をさせていただきました。すると先生は「そのとおりだと思います。人はこの人生で終わらず生まれ変わるから、その度に魂を磨き続けるのが本来の姿です」と答えてくださいました。そのひと言で安心感というのか、自分の生き方はやはりそれでいいんだと確信を得ることができたんです。

陶芸家

北川八郎

きたがわ・はちろう

昭和19年福岡県生まれ。防衛大学校中退後、カネボウ化粧品に入社。退社後失意のうちにインドを放浪し、59年阿蘇外輪山の小国郷に移住。作陶や農業を続ける一方、断食をとおして得た「繁栄の法則」を伝える講演活動、経営指導などを全国で展開。著書に『繁栄の法則』(その一、その二)』(致知出版社)『無敵の経営』(サンマーク出版)など。

分かち合うほど入ってくる

鎌田 佐藤さんと先生とのお付き合いは私よりもっと長いですよね。

佐藤 私は先生と出会ってちょうど10年になります。それまでも自己啓発の本はたくさん読んでいましたが、『繁栄の法則』(致知出版社刊)を読んだ時は全く違う読後感、清冽な清水で心が洗われるような感動を覚えたのです。
最初に先生とお会いしたのは東京の池袋三越での陶器展でしたが、その頃、300名くらいのセミナーが開かれて一番前でお話を拝聴しました。雲の上の存在に感じていた北川先生がフレンドリーに話しかけてくださったので大変感動しました。

鎌田 北川先生のお話がスーッと入っていったというのは、やはり何か求めるものをお持ちだったのでしょうね。

佐藤 そうかもしれません。私の家庭は父親が病気がちだったこともあって、両親は信仰や祈りをとても大事にする人でした。「自分が多少損をしても人を喜ばせること(徳を積むこと)にこそ大きな意味があるんだよ」と教えられて育ったことが私の原点です。徳を積むことを割合早くに教わっていたからか、先生の本を読んだり講演をお聴きしたりした時、何の抵抗もなく受け入れることができました。
父親は地方の中小企業の経営者ですが、先生の場合は40日を超える断食を二度経験なさった上でのお話ですので、より深い内容なんですね。「そうだよな」と納得しながら引き込まれていく、そんな感じでした。

鎌田 北川先生のお話を聞く上で、幼少期の体験はとても大きいと思います。私の場合も、母親が町に1軒しかない小さなよろず屋をやっていましたが、僅かお菓子1個の買い物をしたお客様にも「ありがたい」という感謝の気持ちを忘れることがなかったし、支払期限など約束は絶対に守る人でした。
母は365日、店を開けていました。お客様が来ない日も当然あったと思うんですが、「なぜ365日、休まずに店を開けるの」と質問したら「この小さな町で、誰か一人でも買い物に来たら困るだろう」と。儲けのことなんか全然考えていないわけです。いまにして思えば、私のお金や商いに対する考え方の原点は、そんな母の姿勢だったと思います。

北川 お二人がおっしゃるように、経営者にとっては幼少期の両親との関係が事業に大きく影響してくるようですね。駄目になっていく経営者の中には、幼少期に両親からきちんとした愛情をもらっていなかったり、倫理観を教えてもらっていなかったりする人たちが多くいらっしゃいます。
その点、鎌田社長も佐藤社長もそうですが、両親からたっぷり愛情を注がれ、幼少期に人生の法則を教えてもらっている人たちは全く違います。その一番の違いはやはり個人欲の深さなんですね。倒産する会社を何千と見てきた私の知人も、倒産する企業と、しない企業の違いは何かと言ったら個人欲の深さだと言っていました。
つまり、会社を倒産させる社長の多くが自分と自分の家族は大切にするけれども、周りは一切信用しない、とにかくお金が大好き、という人たちです。そして、そういう人は不安感も人一倍強い。

佐藤 不安感ですか。

北川 お金や物をたくさん持てば持つほど失うのが怖いわけです。分かち合うことを知っている人は、人の徳といいますか、社徳を培えば、収入や売り上げは途絶えないという法則を知っています。それを覚らない人はいま持っている物をあげたら、もう入ってこない、失うと思ってしまう。でも、そうではないんだ。分かち合うことを覚れば清水は湧き続けるから不安に陥ることはないと私は教えているんです。

佐藤 そういう意味でも、子供の頃に正しい法則を教えておくことはとても大事ですね。

北川 そう思います。子供の頃の教育は大事です。しかし子供の時に教えてもらえなかったから、人は大人になってもずっと変わらないかと言ったら変われるんですね。人生には出会いの法則があって、よき友、よき仲間とご縁をいただくことによって、人生はいくらでも好転させていくことができます。40歳になる頃までに、人生はこの魂を磨くためにあると気づくと人生は変わっていきますね。

鎌倉投信社長

鎌田恭幸

かまた・やすゆき

昭和40年島根県生まれ。東京都立大学法学部卒業後、日系・外資系の信託銀行で20年にわたり資産運用業務に携わる。平成20年鎌倉投信を創業。著書に『外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社』(アチーブメント出版)。