2018年6月号
特集
父と子
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父と子

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    父は中学校の校長をしていた。自分が負けず嫌いだったから、娘に対しても小さい時から「偉くなれ」と言って育ててきた。大きくなると、さらにその上に、「人よりも偉くなれ」と育てた。

    小学校から高校まで、娘は順調に伸びていった。だが、東京の大学に進むとそうはいかなくなった。いくら努力しても自分より優れた人が数多あまたいる。娘は絶望し、電車に投身自殺をした。

    「両親の期待にそうことができなくなりました。人生を逃避とうひすることは卑怯ひきょうですが、いまの私にはこれよりほかに道はありません」

    残された手紙にはそうあり、続けてこう書かれていた。

    「お母さんほんとうにお世話さまでした。いま私はお母さんに一目会いたい。会ってお母さんの胸に飛びつきたい。お母さんさようなら」