2019年2月号
特集
気韻生動
対談
  • (左)新規開拓社長朝倉千恵子
  • (右)俳優、画家片岡鶴太郎

気力こそすべての根源

お笑いから演劇、ボクシング、絵画、ヨーガと、活動の領域を次々と広げつつ第1線で走り続ける片岡鶴太郎氏。その片岡氏の大ファンという朝倉千恵子さんもまた、様々な変転を経て〝働く女性の応援団長〟という独自のフィールドを築き上げてきた。溢れんばかりの気力で道を切り開いてこられたお二人が語り合う、出会い、そして人生――。

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やらない後悔よりやった経験

朝倉 あこがれの片岡さんと、まさかこうして対談させていただく機会が巡ってくるとは思いませんでした。きょうはものすごくドキドキしています(笑)。

片岡 僕もとても楽しみにしていました。素敵なオフィスにお招きいただいてありがとうございます。

朝倉 2018年8月20日に初めてお目にかかったばかりなのに、そこからポンポンと話が進んで、きょうはもう対談でしょう。つながるご縁って、理屈抜きで繋がっていくものなんですね。

片岡 出会いのチャンスって、誰のもとにも日常の瞬間瞬間に訪れていると思うんです。その瞬間に何をすべきかという時に、朝倉さんはとても素敵なチョイスをなさっている。僕に対してどうというんじゃなくて、とにかくあの時の朝倉さんの振る舞いに僕は感動したんですよ。

朝倉 あの日は講演で佐世保させぼへ向かうために、羽田空港で飛行機を待ちながらメールを打っていたんです。そうしたら目の前にふっとシルエットが浮かんで、パッと顔を上げたら目の前に片岡さんが座っていらっしゃる。あらっ、どうしようって(笑)。
私は研修や講演のお手伝いで47都道府県すべて回らせていただいていますから、芸能関係の方をお見かけすることはよくあるんです。でもすべてアクションを起こしているわけではありません。どんなに有名な方でも、自分の魂が反応しない人に握手を求めたりすることはまずないですね。でも片岡さんのことは以前からずっと応援していましたし、自分の内なる声に行動を促されたんです。

片岡 ありがとうございます(笑)。

朝倉 ただ、周囲にたくさん人がいる中でいきなり声をお掛けするとご迷惑になってしまう。でも、ここでお声掛けしなければきっと後悔する。絶対にアクションを起こすべきだと思いましてね。
手にしていた仕事道具を全部かばんにしまい、隣のマネジャーさんの横に回って、「片岡さんのファンなんです。ご挨拶させていただいてよろしいですか?」ってお願いしたら、どうぞと。社に帰ったら早速部下たちに、その時の様子を実況中継しましたけど(笑)、本当にありがとうございました。

片岡 ああいう時、いきなり話しかけられることも多いんですけど、朝倉さんはスッとマネジャーのほうに回られた。あぁ普通の方ではないなって、お心遣いに感銘を受けたんです。そういう方が僕のグッズを利用してくださっているのを知って嬉しかったし、ありがたいことですから、後で名刺とグッズをお送りしたら、お礼に本を贈ってくださいましたね。

朝倉 すぐに名刺とグッズを送っていただいて感動したので、お礼状と一緒に、致知出版社さんから出させていただいた『すごい仕事力!』をお贈りしました。

片岡 それを拝見して、あぁ僕もご縁をいただいている致知出版社さんから本を出していらっしゃるのかって、また一つの共通点が生まれるわけですね。そして、朝倉さんのあの素敵な振る舞いはどこから生まれてくるのか、背景にあるご経験や生き方をぜひ伺ってみたい。だったら対談させていただくのが1番いいと思ったんです。

朝倉 「対談できるといいですね」って片岡さんからメールをいただいた瞬間に、まだ実現する確証もないのに、だったら絶対に致知出版社さんだと思ったんです。すぐに編集部の方にご相談して、きょうを迎えることができました。
私は常々「迷ったら困難な道を選ぶ」「向き不向きより前向き」「やらない後悔よりやった経験」といったお話をさせていただいているんです。空港で片岡さんを拝見した時、まさにそれを自ら実践する瞬間が訪れたわけですけど、勇気を持って1歩踏み出して本当によかったと思います。あの時にお声掛けしていなければ、きょうのこのご縁はないわけですからね。

俳優、画家

片岡鶴太郎

かたおか・つるたろう

昭和29年東京都生まれ。高校卒業後、物まねの片岡鶴八師匠に弟子入り。テレビのバラエティー番組を足がかりに大衆の人気者となり、幅広い役を演じられる役者として活躍中。また、画家としても全国各地で展覧会を開催する一方、ヨーギーとしても認められ、賞を受賞するなど活躍は多岐にわたる。著書に『50代から本気で遊べば人生は愉しくなる』(SBクリエイティブ)『心の中に「静」をもつ』(サンマーク出版)など。

腹の主が心地いい道をチョイスする

朝倉 片岡さんはこの度、芸能生活45周年、画業25周年の節目をお迎えになるそうですね。

片岡 いつの間にかねぇ。12月27日から1月14日まで、松屋銀座で個展を開くんですけど、僕の中では正直「あぁそうなの?」っていうくらいの感じで。僕はもともとお笑いをやることがすべてで、まさか絵を描くなんて思っていませんでしたからね。

朝倉 絵をお始めになったのは、40歳の時でしたね。

片岡 ええ。高校を出てすぐに師匠に弟子入りして、お笑いの世界で有名になりたい、売れたいっていう気持ちだけでやってきて、運よくいろんな方からサポートをいただいて、30代前半までは本当に好きなことをずっとできていました。
ところが40歳が近づいてくると、それまでやっていたシリーズ作品が引き潮のように終わっていくんですね。このままでは40代からの大事な後半生に何にもなくなってしまう。何か魂が歓喜するようなものをやりたいんだけど、それが何なのか分からない。出口の見つからない、エネルギーを持て余して鬱々うつうつとする日が続いていたんです。 

そんな時に見た椿つばきの花に感動しましてね。椿を描けるような人になれたらいいな、絵で自分の心を表現できたら何て素敵だろうって、1度も絵を描いたことがないのに思ったんです。
きょういただいている気というテーマにも関係すると思いますけど、僕は子供の頃から腹のぬしが騒ぐというか、どこか根源的なところから出てくるサインに従って道をチョイスしてきたところがあるんです。

朝倉 それ分かります。内側からワーッと魂の叫びみたいなものが聞こえてきて、居ても立ってもいられなくなる瞬間ってありますものね。

片岡 椿を見た時も、心の中でシード(種)のようなものがググッと頭をもたげてくるのを感じたんです。これは「行け」ってことなのかなと思って、すぐに絵の道具を買ってきて独学で描き始めたのが20年前なんですよ。
僕はこの腹の主をずっと大事にしてきました。道をチョイスする時は、主が歓喜したり、心地いいっていうほうを大事にしてきたから、あんまり頭で考えたことがないんです。
子供の頃はお笑いを見て、これをやりたいなっていう思い1つだけでした。自分に才能があるのか、お金が儲かるのかなんて全然考えずに、ただひたすらお笑いをやりたい。それだけでしたからね。

新規開拓社長

朝倉千恵子

あさくら・ちえこ

昭和37年大阪府生まれ。小学校教師、証券会社などの勤務を経て、平成9年(株)社員教育研究所入社。12年度年間売り上げナンバーワンになり、トップセールス賞を受賞。13年独立。16年(株)新規開拓を設立。著書に『すごい仕事力!』(致知出版社)『コミュニケーションの教科書』(フォレスト出版)など。