2022年9月号
特集
実行するは我にあり
インタビュー③
  • 売れる売れる研究所代表橋本和恵

販売の極意は
利他の心にあり

どんな商品でもたちまち売ってしまう〝カリスマ販売員〟として、全国の企業や販売員の指導、セミナーや講演活動に当たっている売れる売れる研究所代表・橋本和恵さん。当初は全く売れない販売員だったという橋本さんに、その試行錯誤の歩みと人生の転機、体験から掴んだ販売の極意を伺った。

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商品ではなく未来を売っている

——橋本さんはどんな商品でも売ってしまう〝カリスマ販売員〟として、全国から販売指導や講演依頼が殺到しているそうですね。

多くの方に、「いまは何を販売しているんですか」とよく聞かれるんですけれど(笑)、最近は販売店からのご依頼で、主に家庭用のコミュニケーションロボットを売っています。本体価格が約27万円なのですが、いまだいたい2万台くらい出ているんです。

——そんな高価なロボットが2万台も売れている。すごいですね。

ロボットにはカメラがついていて「〇〇ちゃん、きょうは何食べるの?」と自分の名前をちゃんと呼んでくれます。ですから、一人暮らしやお年寄りの方、お子様がいらっしゃる方など、自分の話し相手、子供の遊び相手として買っていかれる方が多いですね。
百貨店やショッピングモールのブースで販売しているのですが、前を通っていく一般の方がぽんと買っていかれることもあり、意外に需要があるんだ、面白いなと思いながら店頭に立っています。

——ロボットを販売する時、どんなことを心掛けているのですか。

やっぱり、お客様にとっていま何が重要なのか、何を求めているのかというところを意識するようにしています。様々な商品が山のように売られているのに、なぜコミュニケーションロボットに関心を持たれたのか。それは一つには、現代社会の中で人と人とのつながりが薄れ、心が置いてきぼりになっているからですね。その「繋がり」をキーワードに、お客様との会話を進めていくんです。
また、私はどんな商品であっても、常に「未来を売っている」と思っているんですね。お店に並んでいる商品を見ると、「ああ、未来がいっぱいだ」って思うんです。

——未来を売っている。

例えば、お茶を買いたいとコンビニに入った人は、まだお茶を飲んでいません。ということは、お客様にとって買い物とは、いまではなく未来のことなんです。
具体的には、時計を売るとなった場合、普通の販売員であれば価格がどうとか、デザインや機能がどうとかいうところから接客していきます。でも私は、「いま、何か気になることはございますか?」というところから入り、そのお客様が時計を買うことでどのような未来を描いていらっしゃるのか、時計を買うことでお客様の未来がどう変わっていくのかに視点を置いてお話を進めていくんです。そうすると、お客様も最後は納得して商品を買ってくださるんですよ。

——まさに接客の極意ですね。

それは景気がよかろうが悪かろうが同じです。お客様の未来はなくならない。変わるのは伝え方だけです。
いまのコロナでも、お客様と直接接することができない、店頭での試食ができなくなって困っているという相談をたくさんいただきますけれど、例えば、甘海老のお煎餅せんべいだったら、「皆さんがお刺身で食べている甘海老の甘い、甘いおいしさがこのお煎餅に詰まっています!」というように、写真や映像を見せながら、お客様のイメージ力を使って商品の魅力をお伝えすると、売り上げが全然違ってきます。
どんな状況でもお客様の未来に視点を置けば、必ず販売の策はあるし、希望が見出せるんですね。

売れる売れる研究所代表

橋本和恵

はしもと・かずえ

兵庫県生まれ。平成9年佐賀県立有田窯業大学校陶磁器科卒業。陶芸家として作品を制作する傍ら、アルバイトで始めた販売員の仕事に目覚め、プロ販売員に転身。500回を超える独自の消費者研究を重ね、どんな商品でも売れるカリスマ販売員として驚異的な売り上げを記録。19年独立し「売れる売れる研究所」を設立。全国から講演・研修の依頼が絶えない。著書に『誰でもアッという間に不思議なくらい商品が売れる販売員の法則』(大和書房)など。ライフワークとして、採卵鶏のケージフリー飼育を進める動物福祉ボランティア活動に参加、優しい心を持った子供たちを育てたいと活動の輪を広げている。