2026年4月号
特集
感謝にまさる
能力なし
一人称
  • 愛知専門尼僧堂堂頭青山俊董

天地いっぱいに
輝いて生きる

師に学んだ生き方の知恵

深い味わいのある説法で知られる曹洞宗の尼僧・青山俊董師は1月に93歳を迎えた。九十路のいまなお坐禅指導や講演、執筆など多忙なスケジュールをこなし、席の暖まる暇がない。このほど弊社から『天地いっぱい、命を輝かせて生きる』を上梓した青山師に、薫陶を受けた師の教えを振り返りつつ、生きていく上で大切な知恵をご教示いただいた。

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    愛知専門尼僧堂堂頭

    青山俊董

    あおやま・しゅんどう

    昭和8年愛知県生まれ。5歳の時、長野県の曹洞宗無量寺に入門。駒澤大学仏教学部卒業、同大学院修了。51年より愛知専門尼僧堂堂頭。参禅指導、講演、執筆のほか、茶道、華道の教授としても禅の普及に努めている。平成16年女性では2人目の仏教伝道功労賞を受賞。21年曹洞宗の僧階「大教師」に尼僧として初めて就任。令和4年大本山總持寺の西堂に就任。著書に『道はるかなりとも』(佼成出版社)『十牛図・ほんとうの幸せの旅』(春秋社)『泥があるから、花は咲く』(幻冬舎)など多数。最新刊に『天地いっぱい、命を輝かせて生きる』(致知出版社)。

    93歳ようやく入り口に

    この1月、私は満93歳を迎えました。一昨日までそうどうせっしんや日曜参禅会が続いて、昨日は講演、明日からは信州(長野県)のぼうりょうでお茶のけいを指導することになっております。

    名古屋の尼僧堂と無量寺を毎月行き来し、永平寺、そうの両本山で提唱(講義)を行い、依頼された原稿も結構あるものですから、これも合間合間に書くことにしています。

    この年になると大抵はやることがなくて時間をつぶすことばかり考える人が多いのですが、私の場合はどの仕事から先に片づけようか、どこで時間をつくろうかと、毎日がその連続ですから誠に忙しい。この5年ほどの間にのうこうそく、心筋梗塞、大腸がん、心臓発作など立て続けにいろいろな病気を頂戴しました。それでもこうして生かされて、若い修行僧たちと共に歩めるわけですから、考えてみたらありがたいことですわな。

    私の父は書家で、「しょきょう」などの漢籍を楽しんでいましたが、あまり丈夫ではなく52歳、私が7歳の時に亡くなってしまうんです。その父の私への遺言が「私は体が弱くて修行らしい修行ができなかった。おまえは出家をして私の分まで修行をしてくれ」というものでした。幼い私にその意味が分かるはずもなく、今日まで90年近く修行を続けてまいりましたが、「これでいいですか。お父さんの分まで修行したことになりますか」、そうどこかで聞いてみたいという思いが年々強くなってまいりました。

    それにこの年になっていつも思うのは「明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学ぶ」というガンジーの言葉ですね。命は仏様にお任せするしかない。多くの病気をいただいていつ死んでもいいという思いがある一方で、修行道場にこの年まで置いていただき、仏道を参究さんきゅうする機会を頂戴してきたのに、歩みが遅くてようやく入り口に立つ思いでいます。

    どうげん様のものを読んでいても、いまだに分かっていないことばかり。ですから、永遠に生きるかのように学ぶというガンジーの気持ちがよく分かるんですね。

    幸い年齢と病気のおかげで気づくことが非常にたくさんある。そういう意味でも一日でも長く生きて、いただけるものは一歩でも深く頂戴したい、というのが私のいまの心境です。