一つの精子と一つの卵子が結合する。生命誕生の始まりである。
1回の射精で1億とも2億ともいわれる精子の群れが一つの卵子めがけ、我先にと突進していく。そして一番最初に一つの精子が卵子に達した瞬間核ができ、後から来る精子を一切受けつけなくなる。もし別の精子が卵子と結びついていたら、自分という生命はない。1億何千万との競争に打ち勝って、私たちの生命はいまここにある。
これは厳粛かつ神秘的な事実だが、10年ほど前、たまたま見たテレビ番組がこのテーマを取り上げていて、さらに驚いた。それによると、大量の精子はすべて卵子に向かっていくのではなく、一群は途中でくるりと向きを変え、自分たちの仲間以外の精子が入ってくるのを阻止、撃破するのだという。仲間の選良が卵子と早く結びつくのを助けるためである。