2023年11月号
特集
幸福の条件
一人称
  • 脳科学者岩崎一郎
脳科学が明らかにした

「誰もが幸せに
なれる法則」

科学の進歩は、人間の可能性を大きく開いていく。幸福を実現する道について、最新の脳科学が示唆するものは何だろうか。「脳磨き」を提唱する岩崎一郎氏が説く、幸せになるための脳の使い方、鍛え方とは──。

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脳全体をバランスよく協調的に働かせる訓練

歯磨きを毎日行うのと同じように、脳を鍛えることを日々の生活習慣にして、幸せな人生を歩む方を増やしたい。私が脳科学者として、そうした願いを込めて提唱しているのが「脳磨き」です。

脳は860億個の脳細胞と、それらをつなぐ膨大な神経繊維からできています。すべての神経繊維を繋ぎ合わせた長さは約50万キロメートル。地球と月を繋いで、さらに地球を3周できる長さです。かくも膨大な脳細胞と神経繊維が脳の中に詰まっているのです。

そして脳が最も活性化するのは、この脳内の膨大なネットワークが協調的にスムーズに働いている時であり、それは幸せを感じている時の脳の状態でもあることが、米国ウィスコンシン大学の研究で明らかになっています。

ところが残念なことに、普段私たちの脳のネットワークは部分的にしか使われておらず、幸せな脳の状態の100分の1~500分の1程度しか活性化していません。脳が最大限に活性化し、幸せを感じている状態にしていくには、トレーニングが必要です。そこで私は、研究者としての約30年に及ぶ研究成果を踏まえ、科学的根拠に基づいて脳磨きを確立したのです。

脳磨きは、脳全体をバランスよく協調的に働かせるようにする脳のトレーニングです。「脳トレ研修」と銘打ち、これまで200社以上の企業様に導入していただくと共に、最近は「脳磨き検定」を開発し、個人で脳磨きを実践される方の支援も始めました。

研修に参加された方々からは、「そっせんすいはんと前向きな言葉が増えた」「人の『良いところ』を探すようになった」「周囲に意識を向けて自然と勇気づけを行えるように変化してきた」「仲間との距離感が近くなった」「心が一つになって高いパフォーマンスを上げられるようになった」など、たくさんの喜びの声をいただいています。

脳磨きは、身近な人との信頼関係を深めて心を一つにし、幸福を実現する道でもあるのです。

脳科学者

岩崎一郎

いわさき・いちろう

昭和36年神奈川県生まれ。京都大学卒業、京都大学大学院修士課程修了後、米国ウィスコンシン大学医学部大学院で博士号(Ph.D.)取得。旧通産省の主任研究官、ノースウェスタン大学医学部脳神経科学研究所の助教授を歴任。平成18年国際コミュニケーション・トレーニング創業。現在までに200社以上で企業研修を実施。著書に『なぜ稲盛和夫の経営哲学は、人を動かすのか?』(クロスメディア・パブリッシング)『科学的に幸せになれる脳磨き』(サンマーク出版)など。