2023年6月号
特集
わが人生のうた
一人称
  • 空手道場「瀬戸塾」師範瀬戸謙介
幕末の志士しし

橋本はしもと 左内さない
啓発録けいはつろく』に学ぶ

幕末の志士・橋本左内が14歳の決意を綴った『啓発録』。その内容は、年齢から抱くイメージとはかけ離れた教養、自律心、覚悟に溢れ、読む者を奮い立たせずにはおかない。同書を子供たちの教育に活用し、この度弊社より『14歳からの「啓発録」』を上梓した瀬戸謙介氏に、自身の活動を交えて、14歳の志士から学ぶべきものについてお話しいただいた。

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14歳で臨む立志式

私はこの度、致知出版社より『14歳からの「啓発録けいはつろく」』を上梓じょうししました。同書では、私が主宰する空手道場「瀬戸塾」で毎年行っている「立志式」のことを紹介しています。

立志式は、あと1年で義務教育を終える14歳の子供を対象に行っています。式の3か月前から毎週金曜日、空手の練習の後約20分間、これからの人生をどう生きるかを一緒に学びます。そして1週間前には靖國やすくに神社におもむき、境内にある遊就館ゆうしゅうかんで特攻隊の方々の遺書を読み、昇殿しょうでん参拝を行います。国際社会に翻弄ほんろうされながらも日本という国がいかに守られてきたかを知り、いまの日本を創り上げてくださったご先祖様への感謝の気持ちを抱くことを学びます。

立志式の当日は保護者、来賓らいひん、他の塾生たちの前で決意文を発表し、決意の言葉を書いた板を正拳せいけん突きで割ります。彼らの覚悟に満ちた晴れやかな表情を見る度に、私は深い感動を覚えます。

私は、昭和54年に日本空手協会の支部道場として「瀬戸塾」を立ち上げました。空手を始めたのは14歳ですが、これまでたくさんの一流選手たちと接してきて痛感したのは、空手が一流だからといって必ずしも人間も一流とは限らないことでした。空手を学べば当然強くなりますが、ただ強いだけで人間ができていなければ、凶器を身につけた人間を野に放つことになりかねません。

そこで私は瀬戸塾を立ち上げた当初から、空手の指導だけでなく、『武士道』や『論語』の講義を行い、参加者の人間教育にも重きを置いてきました。

そんな私がとても気になるのが、毎年1月にマスコミを通じて報道される各地の成人式の様子です。

最近は、ど派手な格好をしたり、お酒を飲んで暴れ、時に警察沙汰ざたに及んだりする新成人の姿をしばしば目にします。一方で、遊園地で開かれる式に喜々として参加する新成人の姿を微笑ほほえましいと評し、よい成人式の見本であるかのように持ち上げる向きもあります。

こうした成人式を、読者の皆さんはどう思われるでしょうか?

かつて日本には、男子が成人した際に行われる元服げんぷくという儀式がありました。年齢はまちまちで、早い人ではわずか10歳で行っていました。この儀式の目的は、「おまえはきょうから一人前の人間として世間から見られる。だから甘えは許されないことを重々心して、気持ちを引き締めて歩んでいくように」と自覚を促すことでした。

ところがいまの成人式は、参加する側からも、運営する側からも、大人になる覚悟を定める儀式という意識があまり伝わってきません。日本全体が甘えの構造に支配されていることに強い危機感を抱いた私は、平成21年から立志式を行うようになったのです。

空手道場「瀬戸塾」師範

瀬戸謙介

せと・けんすけ

昭和21年旧満州生まれ。14歳で空手を始める。獨協大学卒業。54年「瀬戸塾」を立ち上げ、空手指導と武士道や『論語』の講義を通じた人間教育に尽力する。現在、社団法人日本空手協会八段、日本空手協会東京都本部会長。著書に『子供が喜ぶ論語』『子供が育つ論語』(共に致知出版社)。