世界100か国以上、約4000万人もの人々が毎日服用している「スタチン」。世界二大死因の虚血性心疾患と脳卒中の元凶となる血中コレステロール値を低下させるのみならず、アルツハイマー病やがんなどにも有効と示唆され、「奇跡の薬」と呼ばれている。その創薬の種となったコレステロール合成阻害物質を6,000株もの菌類を調べた末に発見し、商業化の土台を築き上げたのが、東京農工大学特別栄誉教授・遠藤 章氏、82歳だ。幾度も失敗や試練を乗り越え、誰も成し得なかった金字塔を打ち立てたのである。その成功の軌跡に迫った。
東京農工大学特別栄誉教授
遠藤 章
えんどう・あきら
昭和8年秋田県生まれ。32年東北大学農学部卒業後、三共(現・第一三共)入社。41年アルバート・アインシュタイン医科大学留学。帰国後、三共発酵研究所主任研究員、同研究室長、東京農工大学農学部助教授、同教授などを経て、平成9年同大学名誉教授、㈱バイオファーム研究所代表取締役所長。20年より現職。日本国際賞、マスリー賞、ラスカー賞などを受賞。24年日本人として初めて全米発明家殿堂入りを果たす。著書に『新薬スタチンの発見』(岩波書店)など。