拝天拝人拝己──天を拝み、人を拝み、己を拝んで生きる。平澤 興氏が晩年に至った境地である。恩に報いるとは何も特別なことではない。人間として生まれた奇跡に気づき、あらゆるものを拝みながら最後まで成長し続けること、それが大切なのだと平澤氏は言われる。深い眼差しで人間観察を続けた人生の達人が残した「恩」にまつわる言葉を、このほど弊社より刊行された『平澤興一日一善』の中からご紹介する。
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ひらさわ・こう
平澤 興
明治33年新潟県生まれ。幼時より医師を志し、第四高等学校、京都帝国大学医学部を経て、大正13年京都帝国大学医学部解剖学教室助手。翌年同学部助教授。15年新潟医科大学助教授。昭和3年から文部省の海外留学生としてスイス・ドイツ等に留学後、5年同大学教授。翌年、日本人腕神経叢の研究により医学博士号を取得。21年京都帝国大学教授。32年から京都大学総長を2期6年間務める。38年京都大学総長を退官し同大学名誉教授。その後、京都市民病院院長、京都芸術短期大学学長などを歴任。26年日本学士院賞、31年武田医学賞、45年勲一等瑞宝章受章。平成元年6月17日、心不全のため京都市内で没。著書に『生きよう今日も喜んで』『平澤興講話選集「生きる力」(全5巻)』など。最新刊に『平澤興一日一言』(いずれも致知出版社)。