この対談はいまから27年前、1994年に行われたものである。時に稲盛和夫氏62歳。35周年の節目を迎えていた京セラの経営に加え、第二電電の設立にも携わり、八面六臂の活躍を続けていた頃である。対する新井正明氏は当時82歳。住友生命保険の社長、会長を歴任した関西財界の重鎮であった。人生と経営の本質を捉えた両氏のお話は、27年の時を経ていささかも色あせることがない。初出時の特集「懸命不動」の巻頭を飾った名対談を、ここに再録する(肩書は掲載当時のもの)。
住友生命保険名誉会長
新井正明
あらい・まさあき
大正元年群馬県生まれ。昭和12年東京大学法学部法律学科卒業。同年住友生命保険に入社。13年に応召、ノモンハン事件での戦傷により右脚を切断。15年復職。25年取締役。33年常務。38年専務。41年社長。54年会長。61年名誉会長に就任。長年、安岡正篤氏に師事し、関西師友協会会長も務めた。平成15年死去。著書に『古教、心を照らす』『心花、静裏に開く』『先哲の言葉』(いずれも致知出版社)。
京セラ会長
稲盛和夫
いなもり・かずお
昭和7年鹿児島県生まれ。鹿児島大学工学部卒業。34年京都セラミック(現・京セラ)を設立。社長、会長を経て、平成9年より名誉会長。昭和59年には第二電電(現・KDDI)を設立、会長に就任、平成13年より最高顧問。22年には日本航空会長に就任し、27年より名誉顧問。昭和59年に稲盛財団を設立し、「京都賞」を創設。毎年、人類社会の進歩発展に功績のあった方々を顕彰している。また、若手経営者のための経営塾「盛和塾」の塾長として、後進の育成に心血を注いできた(令和元年12月に閉塾)。著書に『人生と経営』『「成功」と「失敗」の法則』『成功の要諦』、共著に『何のために生きるのか(四六判・新書判)』(いずれも致知出版社)など。