『酔古堂剣掃』という本がある。
明末の教養人、陸紹珩が生涯愛読した古典の中から、会心の名言・嘉言を選び出し収録した語録集で、全12巻から成る。
酔古堂は陸紹珩の雅号で、古人の学問・見識に酔う人ということ。そして、その古人の名言で心の邪気を掃うという思いを込めて、陸紹珩は書名としたのだろう。
『酔古堂剣掃』は幕末、嘉永6(1853)年に翻刻刊行され、たちまち志士の間に流行、明治大正期にもよく読まれたというが、安岡正篤師が同書をテキストに講義されており、弊社はそれをもとに『酔古堂剣掃を読む』を出版させていただいた。
本号の特集テーマ
「名を成すは毎に窮苦の日にあり
事を敗るは多くは志を得るの時に因る」
もその中に記されている言葉である。
人が名を成す、即ち成功するのは突然成功するわけではない。必ず窮苦の日があって、それによって鍛えられて成功する。だから、成功するかどうかは窮苦の日の過ごし方で分かる。同じように、失敗するのはたいてい得意・得志の時による。うまくいっていい気になっていて失敗する、ということである。