弊誌ともご縁の深かったセブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文氏が、去る5月18日(月)にお亡くなりになりました。享年93でした。
日本のコンビニの生みの親である鈴木氏は、1932年長野県生まれ。大学卒業後、東京出版販売(現・トーハン)へ入社し、担当した広報誌の部数を大幅に拡大するなどの実績を上げ、さらなるやりがいを求めて30歳でヨーカ堂(現・イトーヨーカ堂)へ転職。スーパーマーケットという言葉すら知らないところからの挑戦でした。
10年後、研修でアメリカを訪れた際に出合ったのが、コンビニエンスストアという新しい事業モデルでした。その可能性に懸けた鈴木氏は、運営会社の米サウスランドとの難交渉を経て、1974年に東京・豊洲にセブン⁻イレブン1号店を出店。当初は賛同者が皆無で、四面楚歌の中からのスタートでしたが、24時間営業、共同配送、公共料金の収納代行、セブン銀行、セブンプレミアム(プライベートブランド)等々、前例のない施策を次々と打ち出し、コンビニ最大手へと牽引。さらにセブン&アイ・ホールディングス会長兼CEOとして、国内屈指の流通グループを築き上げました。
弊誌の取材で鈴木氏は、成功の要因を次のように語っています。
「時代は常に変化しているため、過去の成功事例に縋りついているだけでは成功は掴めない。『変化対応』が私のモットーだ」
「コンビニ事業の成功の根底には、常にお客様の立場で考えるという変わらない視点があった。(中略)仕事は皆に同じように与えられるからこそ、自分から一歩踏み出す挑戦が必要なのである」
鈴木氏は、『致知』を創刊時から愛読し、人生や経営の糧にしてこられました。初めて取材に応じていただいたのは1985年6月号。以来、対談などを通じて、実体験に基づく貴重な示唆を与えていただき反響を呼びました。
折に触れ、弊誌に温かいエールをくださっていた鈴木氏は、創刊45周年の節目に以下のメッセージをお寄せいただきました。
「気がつけば『致知』とは創刊当時からの長いお付き合いとなります。何気ない言葉が珠玉の輝きとなり私の魂を揺さぶり、五臓六腑にしみわたる湧き水がごとく私の心を潤し、日常を満たし、そして人生を豊かにしてくれている『致知』に心より敬意を表し感謝申し上げます。学びは、暗闇の中に一筋の光を見出すようなもの。『致知』は未来を担う次世代のリーダーの方々にも、人生に新たな光明をもたらしてくれるでしょう」
鈴木氏のご期待に沿うべく、弊誌は今後とも一層の誌面充実に邁進してまいる所存です。
生前のご厚情に深謝し、衷心よりご冥福をお祈り申し上げます。