昭和20年の敗戦後、突如としてソ連により不法占拠された我が国固有の領土である北方領土(択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島)。度重なる返還交渉にもかかわらず、70年以上を経たいまなお返還の目途は立たず、当時約1万7,000人いた島民の半数以上が再び故郷の地を踏むことなく亡くなっている——。長年、北方領土返還運動に携わり、「北方領土の語り部」として全国各地で精力的な講演活動に取り組んでこられた北方領土元島民の髙岡唯一氏に、波瀾に満ちた生涯と、いまも戻れぬ故郷への思いを語っていただいた。
北方領土元島民
髙岡唯一
たかおか・ただいち
昭和10年歯舞群島・多楽島生まれ。20年終戦後旧ソ連による北方領土不法占拠が行われ、一家で多楽島を脱出。以後、北海道根室の地で育つ。羅臼町で漁業関係の職に就いた後、「社団法人千島歯舞諸島居住者連盟」(現在は公益社団法人)に加盟し、北方領土返還運動に携わる。現在、同連盟援護問題専門委員会委員長などを務め、「北方領土の語り部」として全国各地で講演活動などを精力的に行っている。