2020年12月号
特集
苦難にまさる教師なし
インタビュー
  • 北里大学特別栄誉教授大村 智

この苦難をどう乗り越えるか

いまなお世界を席巻し続ける新型コロナウイルス。世界が直面するこの苦難にいま、一筋の希望の光が差し込んでいる。 ノーベル生理学・医学賞受賞者である大村 智氏が中心になって開発したイベルメクチンの効果が、世界の臨床実験で確認されつつあるのだ。これまでも寄生虫病などに罹った数億人の命を救ってきたイベルメクチン。その開発に込めた思いを交えつつ、私たちがこの苦難に向き合う上での心構えについてお話しいただいた。

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新型コロナウイルスは人工的につくられた?

——世界はいま新型コロナウイルスの危機に直面しているわけですが、私たちはこの危機にどのように対処すればいいのか、感染症の予防・治療に大きく貢献してこられた大村先生のお考えをぜひ拝聴したいと思ってまいりました。
それにしても、年が明けたばかりの頃は、未知のウイルスがまたたく間に世界を席巻せっけんするなど考えてもみませんでしたね。

まったくです。私も2月までは忙しく講演をやっていました。2月には、私が2015年にノーベル賞を受賞してからちょうど150回の節目となる講演会(山中伸弥しんや先生主催)が京都で開かれました。しかし、それ以来、予定されていた講演が次々にキャンセルになって、やるとしてもオンラインに切り替わってしまいました。パソコンの画面を見ながらしゃべる。これはやりづらいですね(笑)。実際に人前で講演できるようになったのは、つい先日のことです。

——約8か月ぶりに。

コロナによる自粛が続くと、ノーベル賞を受賞した80歳の時から5年間でこんなに年を取ったのかと思うくらい体調のリズムが狂いましたよ。いまも体調のよくない状態が続いているんですが、一番は夜眠れないこと。これにはまいっちゃう(笑)。

——しかし、全世界で全人類が同時に、同じウイルスの感染拡大という苦難に直面する。こういうことは人類始まって以来でしょうね。

おっしゃる通りですね。人類はこれまで幾度も大きな感染症を乗り越えてきましたが、全人類が同時に、ということはなかったと思います。
今回の新型コロナウイルスは、感染症状から見れば、インフルエンザによく似ているんです。ところが、インフルエンザとはまた違うんですね。私はその特徴をいくつかにまとめてみたのですが、一つには潜伏期間が長くて、感染したとしてもすぐには発症しないことが多い。そして無症状の人が多い。問題なのはこの無症状の人からも人に感染することで、ここが他のウイルスと違うところです。
感染経路についても飛沫ひまつであったり空気感染であったり食べ物であったり非常に多彩で、一旦感染するとウイルスはすべての臓器に入り込むことができる。しかも、RNAウイルスなので、ウイルスの顔つきが次々に変わり、ワクチンができても使えなくなる可能性があるんです。
それに、普通はウイルスに感染すると、体内に抗体ができて感染しなくなるのですが、新型コロナウイルスの場合は約3か月で抗体の量が急激に減少するという報告もある。
もう一つ恐ろしいのは、新型コロナウイルスの遺伝子は遺伝子配列の4か所がエイズウイルスと同じだという点です。エイズウイルスはいまなおワクチンができていませんが、それと類似の性質を新型コロナウイルスも持っているわけです。

——ああ、新型コロナウイルスはエイズウイルスと同じ性質を持っている、と。

ええ。こういう特徴を見る限り、このウイルスが自然にできたとはなかなか考えにくいんですね。人工的につくられたのではないかと思われるフシがいっぱいあります。実際、エイズウイルスの発見者リュック・モンタニエ博士は「遺伝子配列のか所がエイズウイルスと同じというのはどう考えても不自然だ」とはっきり指摘しています。
だけど、それを証明するのは困難ですね。発生源とされる武漢のウイルス研究所に軍隊が乗り込んで証拠になりそうなものをすべて破壊し、関係者の口封じをしたとされているからです。新型コロナウイルスが蝙蝠こうもりなどの動物によるものなのか、あるいは人工的につくられたものなのか、いまとなってはそれをつかむことが困難になっているのが残念と言う他ありません。

北里大学特別栄誉教授

大村 智

おおむら・さとし

昭和10年山梨県生まれ。33年山梨大学学芸学部卒業。38年東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了。40年北里研究所入所。米国ウエスレーヤン大学客員教授を経て、50年北里大学薬学部教授。北里研究所監事、同副所長等を経て、平成2年北里研究所理事・所長。19年北里大学名誉教授。20年北里研究所と北里学園との統合により北里研究所名誉理事長(現在は北里大学特別栄誉教授)。27年ノーベル生理学・医学賞受賞。著書に『人をつくる言葉』『人間の旬』(共に毎日新聞出版)『自然が答えを持っている』(潮出版社)『ストックホルムへの廻り道 私の履歴書』(日本経済新聞出版社)など。